アイスホッケー日本代表FW平野裕志朗(コメッツ、苫小牧出身)が7月下旬、SNSに「声明」を出した。北米2部のアメリカン・ホッケーリーグ(AHL)でプレーする代表エースは「このままでは日本アイスホッケー界が凋落していくと考え、今後は日本代表を辞退せざるを得ない」とつづった。
アジアリーグを巡る混乱に業を煮やした。釧路市を本拠とするクレインズの選手らが給与遅配のため一斉に離脱し、大半が新チームのワイルズに移籍。しかし、ワイルズの加盟申請は締め切り後のため来季以降の審査となり、クレインズは選手をそろえられず今季は不参加となった。
ワイルズに移った選手たちは宙に浮いた形で、今季プレーできない可能性もある。世界選手権で来季8年ぶりとなるディビジョン1A(2部相当)参戦へ導いた代表3人も含まれ、平野は五輪予選と世界選手権がある来年へ向けて「厳しい。国と国の戦いなのに自爆している」と嘆いた。
声明に「目的」として記したように、国内の選手が試合に出られる機会の確保を最優先に求めている。アジアリーグや日本アイスホッケー連盟、日本アイスホッケー選手会を含む関係団体に対しては、「柔軟性がないし、全てネガティブ。みんな人ごとだと思っている」と感じるという。
自身が決裁権を持つリーダーなら、どう動くか。「毎日でもSNSに動画を上げて考えを伝え、いろんな人の話を聞いてやっていきたい。ワイルズもクレインズも生かして特例でリーグ参戦させるのを目標とし、社会人チームとの交流戦などで強化してもいい。選択肢はあるし、落としどころは見つけられる」と言った。選手を守るはずの選手会が「冷た過ぎる」とも感じており、もし選手会長の立場なら「(リーグ戦の)ボイコットを呼び掛ける。それくらいしないと変わらない」。
声明を掲載したSNSの投稿は19万回以上閲覧され、引用や「いいね」など1500以上も拡散されたが、当事者であるはずの選手の反応は薄い。所属チームにおける発言への締め付けなども想像しつつ、追い風が吹かない現状に「結局、選手も現状維持。守りに入っている」と断じた。
平野は4月の世界選手権D1B(3部相当)で大会最多7ゴールを挙げ、3アシストも決めて5戦全勝での昇格をけん引した。「何も言わなきゃキャリアに傷が付かないのに、なぜそこまでするのか」という声も聞こえてくる。欠かせないエースだからこそ、リスクを負って意志を示した。