早いもので、今年も一年の半分が過ぎました。恒例のイベントやお祭りが次々中止となり、いつもの季節感がないまま月日ばかり流れてしまったように思いますが、自然は変わることなく季節の歩みを進めています。
支笏湖温泉の園地では今、ツルアジサイの花が見頃を迎えています。ツルアジサイは名前が示す通り、他の樹木の幹に張り付いて生育するつる性のアジサイです。
つる植物というと、他の樹木に巻き付いて幹を締め付けたり、丸ごと覆いかぶさって樹木を枯らせてしまうというような、あまり良くないイメージをお持ちの方もいるかもしれませんが、ツルアジサイに関してはそのイメージは当てはまりません。
つるの形態にはさまざまな種類がありますが、ツルアジサイの場合は茎の途中から出る「気根」という根っこで幹にぺたぺたと張り付きながらつるを伸ばします。この気根はあくまで幹の表面に張り付くためのもので、強く締め付けたり、栄養を奪い取ったりすることはありません。
張り付かれた樹木にとっては重たくて少しうっとうしい存在かもしれませんが、樹勢が衰えるような様子はなく、うまく共存しているように見えます。
さて、7月も半ばを過ぎる頃になると、ツルアジサイの花はだんだん終わり始めますが、それと交代するように、同じくつる性でアジサイの仲間のそっくりさん、イワガラミが咲き始めます。花の時期がずれているのは、花粉を運んでくれる昆虫の奪い合いにならないための工夫でしょうか。植物同士話し合ったわけでもないのに、自然界はよくできているものだと感心します。
大きな花が存在感を放つオオウバユリや、レモンのような香りが印象的なシナノキの花も7月中旬からの大きな楽しみです。花々のリレーは秋まで途切れることなく続きます。
(支笏湖ビジターセンター自然解説員 小野寺裕太)