―昨年を振り返って。
「生産台数的には全体で200万台レベルを維持した。(トヨタ自動車が)グローバルに展開する車両の5台に1台ぐらい、われわれのユニットが乗っている車を供給できた。(2月に)事業を支えてきた6速AT(自動変速機)をシャットダウンし、3月に新製品(ハイブリッド=HV=トランスアクスル)がラインオフ。HVの比率がこれまでの16%から25%に上がった。2025年はさらに増えて3割以上になる」
―HV車向け部品の生産が増えている。
「(脱炭素実現に向けてトヨタ自動車が掲げる多様な選択肢)マルチパスウェイの中、HVの比率が上がっている。われわれはトヨタ自動車の子会社でニューハイブリッドトランスアクスル量産拠点と認知されている。良品廉価のものづくりをしっかり進め、親会社が電動化を進めるための原資を稼ぐ。量産拠点プラス新製品の頭出しができるようにすることが、われわれの新しいミッションになる。そのために競争力をさらに磨く。労働人口が減るので、自動化、DX(デジタルトランスフォーメーション)、からくり(動力を使わずに製品を移動させたりする仕組み)などを内製化し、省人化、生産の効率化を図る」
―昨年はトヨタ自動車の認証不正問題があり、台風の影響で部品生産をストップした時期もあった。
「(昨年は)稼働が止まることもあったが、土曜の振り替え出勤などで挽回するため、(今年度)特に収益などに問題はない」
―25年に向けて。
「(昨年)6月に社長となり、9月に中期活動方針を社内に展開した。チームトヨタ、そして北海道になくてはならない会社になることに対し、僕自身が現場で従業員と話をし、思ったことを盛り込んだ。まず、家族や友人に胸を張って誇れる会社にしようということ。従業員を大切にし、活気と思いやりのある働きやすい職場環境を整備した上で、ものづくりの進化、カーボンニュートラル(CN、温室効果ガスの排出ゼロ)、新規事業に取り組もうと話をした」
「ヒアリングの中で『プロジェクトが重なり、生産負荷が高く疲弊感が出た』という話があった。メンバーに余力を作ろうと増員を進めている。北海道も夏場だいぶ暑くなってきているので、暑熱対策や現場の詰所、休憩所の改善について計画を進める」
―人手不足への対応は。
「人に選ばれる会社、働き続けたい会社になろうと思っている。これまでは道内の大学で採用できたが、今後は本道出身で本州の大学に行った方にもアプローチをして採用を強化する。働き続けてもらうための施策も打つ。今年から奨学金の返済支援も始めたい」
「(昨年は)従業員が『この会社で働いてよかった』と思えるよう、インナーブランディングを目的に広告を出した。家族から『すごい会社で働いているね』と理解してもらうと、従業員もより元気になる。副次的に地域の方に理解してもらう機会になり、採用や認知につながるかもしれない。まずは従業員のモチベーションを上げる。これも人事施策の一環と思う」
―脱炭素や水素の利活用について。
「工場から排出する二酸化炭素を減らし、再生エネルギーによる電力需給をし、水素・新燃料など新しいエネルギーの利活用を考えていく。苫小牧の脱炭素先行地域実証事業にも参画させていただいているが、太陽光発電パネルを増やしていき、勇払地域の方々に使っていただくスキームも構築したい。(スパークスグループと連携する)水素サプライチェーン(供給網)の実証も2月から、ハスカップホールの暖房や給湯器などに水素を導入する。北海道は再エネの宝庫で非常にポテンシャルが高い。北海道と苫小牧の域内で地産地消型CNを進めていく」
メモ 苫小牧市勇払の自動車部品製造業で、「北海道にある世界のトヨタ」。道内ものづくり企業では最大手。従業員数は市内企業で最多の3400人規模を誇る。