技術と触れ合った4日間 杉本(すぎもと) 大志(まさし)

  • ゆのみ, 特集
  • 2024年12月17日

  寒風が吹く11月初旬、僕は担任しているクラスの学生たちを引率して東京への研修旅行に向かった。羽田空港で大型旅客機を眺める学生たちの目は、すでに輝きに満ちていた。

   放送技術を研究する施設では、2D/3D映像技術や人工知能(AI)システムの説明に真剣な表情で聞き入っていた。農業系の大学の研究室では、昆虫食やドローン、構造物などの3次元モデルの作成や編集を行う3DCADを活用した最新農業技術に驚きの声を上げていた。情報通信を主に取り扱う研究施設での原子時計、電信技術の博物館での歴史的な資料の展示、IT企業でのデジタル化事例など、見聞を重ねるごとに質問の内容は深まっていった。

   夕方の自主研修では、渋谷や秋葉原の街を歩いた。巨大ビジョンや視覚的な没入感を与える3D映像技術を活用したデジタルサイネージに彩られた街並みは、昼間に学んだ技術の実用例として、新鮮な驚きを与えてくれたようだ。夜のスクランブル交差点で「この広告って、午前中に見たAI技術が使われてるんですかね?」と問い掛けられ、教える僕も学ぶことが多かった。

   学生とカレーやステーキを囲んだ食事の時間は、普段見られない素顔に触れる貴重な機会となった。技術と社会の関わりについて熱く語り合う姿に、彼らの成長を感じた。

   最終日、ある学生が「先生、技術って結局、人のためにあるんですね」とつぶやいた言葉が印象に残っている。食事を共にし、街を歩き、時に冗談を言い合いながら過ごした4日間は、教室では得られない貴重な経験となった。技術の発展と共に成長していく若者たちを見守りながら、教育者としての使命の重さを、改めて実感した。

  (苫小牧工業高等専門学校准教授)

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