【ソウル時事】韓国の尹錫悦大統領は7日午前10時(日本時間同)、テレビを通じて国民向けの談話を発表し、3日に宣言した「非常戒厳」について「国民に不安を与え申し訳ない」と謝罪した。「法的、政治的責任を回避しない」と述べたが、自身の進退については「与党に一任する」と述べるにとどめ、直接的な言及はなかった。
国会は7日午後5時(日本時間同)から本会議を開き、尹氏の弾劾訴追案などを採決する。弾劾案は、提出した革新系最大野党「共に民主党」など野党6党や無所属の計192人に加え、与党「国民の力」から8人が造反すれば可決され、尹氏は職務停止に追い込まれる。
与党の韓東勲代表は7日、記者団に「大統領の正常な職務遂行は不可能で、早期退陣は不可避だ」と指摘。「今後、国と国民にとって最善の方法を議論し悩んでいく」と説明した。自身の尹氏への進言が一定程度反映されたとの認識も示した。
韓氏は、弾劾訴追案に反対するという党方針を覆し6日に賛成する意向を表明。与党は対応を巡り協議しているが、方針変更には至っていない。国会議員ではない韓氏に投票権はなく、20人ほどいるとみられる同氏に近い議員がどれだけ同調するかが焦点となる。
与党が5日に反対方針を決めた際、韓氏は「可決に至らないよう努力する」と述べていた。韓氏は賛成に転じた理由について、非常戒厳の宣言と同時に尹氏が主な政治家を「逮捕、収監しようとしていた」との情報を把握したためだと説明している。
尹氏は3日夜に非常戒厳を宣言し、戒厳軍が国会や中央選挙管理委員会に派遣された。しかし、4日未明には野党主導で国会が解除を求める決議を可決。戒厳令は約6時間で解除された。再び非常戒厳が出されるとの懸念も出ていたが、尹氏は7日の談話でこれを否定した。
野党6党は4日、非常戒厳の発出が「憲法や法律に明白に違反する」などとして、尹氏の弾劾訴追案を提出。発出の条件である「戦時・事変またはこれに準ずる国家非常事態」の「兆候さえ確認されなかった」と指摘した。
韓国では4月の総選挙で野党が勝利し、尹氏や夫人を巡る疑惑への国民の視線も厳しくなっていた。野党は疑惑追及の姿勢を強め、尹氏は厳しい政権運営を強いられていた。