道内7空港(新千歳、稚内、函館、釧路、女満別、旭川、帯広)の運営権一括民間委託(空港民営化)の一環で、1日に新千歳空港の滑走路や駐機場、駐車場などの運営を開始した北海道エアポート(千歳市、HAP)は、2020年度から5年間の乗降客数や路線数の目標値を盛り込んだ中期事業計画を修正する方針を明らかにした。新型コロナウイルスの感染拡大に伴う航空需要の減退を受け、目標値を下方修正する見通し。着陸料やテナント料収入の減収が続いており、当初予定していた7空港への投資の一部先延ばしも検討する。
同社が昨年8月に公表した事業計画では、24年度の新千歳の乗降客数の目標値を17年度比1・2倍の2783万人、路線数も20路線増の65路線と定める。
苫小牧民報社のインタビューに対し、蒲生猛社長は「航空機の便数が新型コロナ流行以前の15~20%まで落ち込み、乗降客数も減少。5月のテナント料収入も前年同月の数%にまで減る」と指摘。「これだけ大きな影響となると、計画を見直さざるを得ない」と修正の考えを示した。
今夏の観光動向を見定めた上で修正内容を精査するが、乗降客数と路線数を下方修正するとみられる。今秋から作業を進め、年内にまとめる方針。49年の乗降客数の目標値については、3537万人のまま据え置くという。
20年度から5年間で計画していた7空港への総額約1000億円の投資についても一部を先延ばしする。
蒲生社長は、先延ばしする具体的な事業を明らかにしていないが「7空港すべてへの投資は、このままではできない。国とも協議し、後ろ倒ししたい」と説明。その上で「需要がほとんどない国際線で(投資)はできない」とし、国際線ターミナルの建設などは航空需要の動向を見据え、一定の回復傾向が見られた場合、整備に乗り出す考えも示した。
国などとの契約の都合上、同社単独での計画の修正は行えないため国土交通省、道庁、空港所在の千歳市や苫小牧市などに実情を伝え、同意を取り付けたい考えだ。
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新千歳では新型コロナの影響で、4月の国内線の乗降客数が前年同月比87・5%減の17万8259人となり、国際線の運航も3月末からゼロが続いている。
ターミナルビル内の約190のテナントが納めるテナント料は同社の大きな収入源だが、航空需要の減少で飲食店や土産物店の売り上げは激減。同社はテナントの負担軽減へ、3月以降、毎月最低限支払う基本額に売り上げの一定割合を加算する従来の方式から、売り上げの一定割合を支払う方式に見直した。6月分まで適用する方針を決めている。
臨時休業を続けるテナントは依然として多く、テナント料収入も急減。同社広報によると3月は前年同月比24%、4月は同10%にとどまり、5月も同数%まで減る見通しだ。
主要財源の一つである航空各社が空港を利用する際に支払う着陸料の落ち込みも深刻。機材の重量に応じて航空各社が同社に支払う仕組みだが、発着便数の減少や需要減を受けた機材の小型化の影響を受けている。