新型コロナウイルスの感染拡大で外出自粛や「3密」(密閉、密集、密接)を避ける動きを受け、結婚式や披露宴の延期が相次いでいる。苫小牧市でブライダルサロンを展開するグランドホテルニュー王子の黒井克哉総支配人は、「開業以来、かつてない状況」と深刻さを訴える。今後のめどは見えていないものの、収束後の再開に向けて柔軟な視点で備えを進める方針だ。
同ホテルでは例年、月に平均10件ほど招待客を迎える結婚式の依頼を受けるが、今年は5月まででわずか1件。それ以外の予約はすべて延期が決まり、緊急事態宣言後の新規相談もほぼゼロ。例年ピークを迎える6月も予約は入っていない状況という。ブライダルアドバイザーの遠藤朱美さんは「道内外から招待客が集まり、3密をつくることに不安を感じて延期する人が多い」と説明する。
ホテル全体では宿泊や会合なども自粛が相次ぎ、売り上げも前年同期と比べて9割減と極めて厳しい状況。結婚式は近年、30人未満の少人数化やプライベート化が進んでいるといい、ウイルス流行の収束に備えて家族だけの挙式と会食プランなど、依頼者の希望に添ったサービスを充実させる考え。
黒井総支配人は「婚礼のスタイルは常に変化しており、今回の事態でその動きが加速する可能性もある。社会の流れに合わせて自由な発想で模索していきたい」と話す。
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結婚式の延期を余儀なくされたカップルもいる。別の結婚式場で今年6月に挙式予定だった市内植苗の明日見健太さん(26)・瑛さん(26)夫妻は、4月の緊急事態宣言を受けて来年6月への延期を決めた。約80人の出席予定者には事前に知らせていたものの招待状を送付する前だったため、変更に伴う対応は最小限で済んだという。
夫の健太さんは「道外に住む親族も迎える予定だったが、ウイルス流行が続いたため延期を決めた。この先どうなるか分からず不安もあるが、仕方がないという気持ち。人生で一度きりのことなので後悔しないよう準備を進めていきたい」と前向きな思いを語っている。