ダイナックスとアイシンが従業員を一時帰休 新型コロナ 影響長期化の恐れ 自動車部品メーカーに打撃 

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  • 2020年5月20日

  新型コロナウイルスの感染拡大に伴う世界的な新車需要の低迷が、苫小牧市内での自動車部品製造にも打撃を与えている。苫小牧工場を操業するダイナックス(本社千歳市上長都)、アイシン北海道(苫小牧市柏原)は5月末まで、従業員を一時的に休業させる「一時帰休」を実施。トヨタ自動車北海道(同勇払)も生産ラインの一部を昼のみの稼働とし、いすゞエンジン製造北海道(同柏原)は海外向けの生産を停止している。感染拡大の収束は見通せず、影響が長期化する恐れもある。

   ダイナックスは苫小牧市柏原と千歳本社の工場で、4月は不定期に6日間、5月は毎週木・金曜日、多くの生産ラインを休止している。同社はガソリンエンジン車に欠かせないクラッチ板を製造。トランスミッション(変速機)台数ベースで世界一のメーカーだが、3月中旬ごろから国内外の自動車各社からの受注が減ったという。

   両市の工場で派遣も含めた従業員数は1400人規模だが、4月10日から一時帰休を取り入れ、生産量をほぼ半減させた。5月は木、金曜日を基本休みとし、事務職などを含む従業員の多くを一時帰休の対象にした。雇用調整助成金も活用して休業手当を支払い雇用を維持する構えで、同社は「生産が1割減程度であれば他の選択肢もあるが半減ではやむを得ない。従業員の雇用と生産の効率性を守るため」と説明する。

   変速機部品などを製造するアイシン北海道も18日から31日まで、生産ラインの3分の1強を休止し、業員約460人のうち約110人を「一時帰休」とした。同社は親会社のアイシン精機(愛知県)やトヨタ自動車北海道などに部品を供給しているが、4月は約3割減、5月はほぼ半減といい、同社は「国内外の車両工場の動きから遅れて影響が出てくる」と話す。

   変速機メーカーのトヨタ自動車北海道は従業員約3400人の勤務態勢を変更していないが、昼夜2交代制の生産ラインで12日から、海外向けラインの一部を昼稼働のみにしている。同社は2月から中国向けを、4月から海外各地向けを減産していた。一部で浮いた人材は生産ラインの改善などに充てている。

   親会社のトヨタ自動車(愛知県)は5月、国内の全完成車工場を毎週金曜に非稼働日としており、トヨタ北海道は「厳しい状況が続いている」と分析。同月は大型連休に伴って1、11日の2日間、親会社と連動する形でラインの非稼働日を設けただけに、今後の対応についても「検討していく」としている。

   いすゞエンジン製造北海道も従業員約540人の勤務態勢は変えていないが、主力だったタイ、フィリピン向けのエンジン部品の生産、出荷を4月から停止。いずれも現地法人の工場停止に伴う措置で、再開のめども付いているため、同社は「残業がないよう調整したり、シフトを変えたりすることで、一時帰休のような直接的な影響がないようにしている」と話す。

   各社はコロナ禍に見舞われながらも、雇用の維持に最大限の努力をしている。新型コロナ感染拡大前は、いずれも業績を伸ばし、業界全体が人手不足の傾向にあったこともあり、「コロナ後」も見据えて対応する。ただ今後もコロナの影響が長引けば、業績や雇用に直結する恐れもあり、関係者は動静を注視している。

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