深呼吸

  • ニュース, 夕刊時評
  • 2020年4月18日

  新型コロナウイルスの感染が問題になって以来、あちこちの商業施設に行列ができた。対象の品物は変わるが需給の均衡の危うさが列の長短に現れる。

   2月下旬の、デマに始まったトイレットペーパー騒動。先頃は首都圏のスパゲティや乾麺、即席麺の品薄がテレビに映った。米騒動もあった。ドラッグストアのマスクや消毒用品の売り場はずっと品薄のままだ。たまたま通り掛かって、遠くに住む娘や孫たちの不自由を聞いているので、行列に並んでみた知人の現場リポート。高齢者が多く、割り込みを強く注意したり、店員さんの説明に、男性が「聞こえない!」と大きな声を出したり。行列のすべてに行き渡る前に商品がなくなった時に、近くの女性が「うちにあるからいい」とポツリ。「なら、並ばないでよね」と言いかけたがやめた。無経験で、批評しているだけでは分からない緊迫感が伝わってきた。

   政府は、緊急事態宣言の区域を全国47都道府県に広げ、大型連休中の地方への移動自粛を呼び掛けた。人と人の接触を8割減らすのが当面の目標。国の施策の遅れと揺れには腹が立つ。この国は、自分たちがしっかりしなければ持たないことがいよいよ分かった。

   脚の訓練に出掛けた公園の、山裾のヤナギの木が芽吹いて、うっすらと黄緑色に見える。連休にかけて、コブシやサクラが次々と咲き、山全体が新緑に染まる日も近い。まずは大きく深呼吸を。(水)

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