納得

  • ニュース, 夕刊時評
  • 2020年3月25日

  先週末から、あられや淡雪が突然降りだし驚かされる。春と冬のせめぎ合いは、もう確実に春が勝つ季節。雪は屋根や地面をぬらして、すぐに解けた。

   不安定は天気だけでなく人の世にも広がっているようだ。昨夜は午後9時すぎ、2020年東京五輪1年程度延期の大ニュースが茶の間に乱入して驚かされた。新型コロナウイルスの爆発的な感染拡大の中心が、ヨーロッパからアメリカに移りつつあり、平穏な開催は不可能との見方が急速に広がっていた。そんな中で延期の検討開始が発表され、その翌日の急転直下の「1年程度延期」決定。積み上げた準備も、出発の迫った聖火リレーも、一瞬で吹き飛んだ。

   安倍首相は、東京五輪の意義を「東日本大震災からの復興五輪」と話していた。きのうは「人類が新型コロナウイルスに打ち勝った証しとして」と、もう一つ、大きな看板を掲げてみせた。道は平たんではないだろう。地震・津波被災地の復興の遅れと福島第1原発の廃炉作業の遅れ。そこに新型肺炎との闘いへの不安が加わり、経済対策や景気対策の支出の検討も進む。国や東京都には延期に伴う新たな負担も加わるに違いない。

   国民が最終的に背負うことになる負担の重さ、大きさを想像すると体が砕けそうになる。宣言するだけでなく国民をどう納得させるのか。国民や企業の疲弊と非力は新型肺炎との闘いの前哨戦で、すでに明らかになっている。(水)

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