薄笑い

  • ニュース, 夕刊時評
  • 2020年3月18日

  窃盗は犯罪。特にさげすまれる窃盗は火事場泥棒だろう。混乱に乗じて盗みを働く者や不当な利益を得ようとする者が、この恥ずべき名称で呼ばれる。

   富む者から奪って、貧しい者に分け与えたという江戸時代後期の義賊・ねずみ小僧次郎吉の伝説も踏まえた分類か。災害大国日本では、地震や津波の被災地でも、火事場泥棒のうわさが絶えない。

   新型コロナウイルスの感染拡大に絡んでマスクの品不足が続いている。国は感染の多い町に配布、不安の募る病院や高齢者施設への配布も始めるが、空っぽの商品棚を見て困っている人は多い。テレビには箱詰めされて次々と出荷されるマスクが映っているものの、各地の店頭に潤沢に出回るまでには、まだ時間がかかりそうだ。

   国は、転売目的の買い占めを排除するために15日午前0時から、マスクの転売を禁止した。違反すれば1年以下の懲役か100万円以下の罰金、またはその両方が科される。転売の舞台になっているのはインターネット。法外な価格や品名を偽っての転売などが、すでに報道されている。オークションなどを開設している企業は、遅まきながら自主規制を始めた。

   日々多数の死者が出る世界規模のウイルス感染。綱渡りの医療機関。広がる雇用不安と経営危機。高く立ち上がる炎を喜ぶ薄笑いを想像して腹が立つ。規制の開始時期は適正だったのか。罰則は適正なのか。考えさせられる。(水)

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