風評被害

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  • 2020年3月9日

  昨秋、姫路旅行をした。駅近くの食品店にぶらっと入ると、生鮮食品、菓子、総菜などが一通り買える店で、奇遇にも一角で北海道フェアをしていた。

   1畳ほどの台の上に「札幌タイムズスクエア」「マルセイバターサンド」など道民ならなじみの菓子が20種ほど並び、中には苫小牧市の銘菓「よいとまけ」もあった。思いがけない所で地元銘菓に遭遇してびっくりしたが、北海道の物産展がいろいろな規模と場所で開かれ、魅力が知られていることをうれしく思った。

   北海道が誇る海産物、乳製品、銘菓、加工食品などを紹介する物産展は、今年も全国各地のデパートなどで企画されている。ただ、今月に入って10カ所以上がキャンセルされた。新型肺炎の影響のためで、来月開催予定の物産展も未定になった。出展を予定していた事業者は、売り上げを見込める機会を失い落胆しているという。

   明らかな風評被害だが、2011年に発生した東日本大震災による福島第1原子力発電所事故の影響で、福島県産の食品が今でも買い控えされていることを思えば、楽観はできない。事態を乗り越えるには道民が結束し、正しい理解につながる事実を積み重ねていくことだ。道筋は一日も早い緊急事態宣言の解除にある。一人一人が日々できる予防策を励行し、感染者の増加を食い止めたい。道産品に対する悪いイメージが、道外の人々の頭に定着する前に。(林)

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