明治時代以前には北海道に1000羽は生息していたと言われる世界最大級のフクロウの仲間「シマフクロウ」。彼らが生きるためには、餌の魚が豊富にいる川と子育て用の大きな樹洞木のある豊かな森が必要です。しかし、そのような川辺の森は、伐採などにより減少してほとんど残っておらず、今では道東を中心に160羽70つがい程度が生息するのみで絶滅危惧1A類(環境省レッドリスト)に指定されています。日本野鳥の会では、シマフクロウを絶滅の危機から守るために、2004年から生息地を守る活動を実施しており、これまで釧路地域や根室地域を中心に法的な保護がされていない民有地を、ご寄付を元に購入したり、所有者と協定を結んだりして、独自の「野鳥保護区」として保全してきました。現在、道内の野鳥保護区は1000ヘクタール以上になり、12つがいの生息地を守っています。
これまで環境省をはじめ、多くの方が携わってきた保護活動の結果、徐々に増えつつあるシマフクロウですが、近年では日高山脈を越えて道央方面でも確認例が出てきています。これからは道央や道南への分布拡大が期待されます。もちろん苫小牧にもやってくるかもしれません。そこで、当会では、これからシマフクロウ分布の最前線となるウトナイ湖ネイチャーセンター内へ、野鳥保護区を担当するレンジャーを新たに配置しました。
シマフクロウが住める豊かな森は、川を通して海へとつながり、海の豊かな海産物を育んでいます。シマフクロウの森を守ることは、私たちの生活を守ることにもつながるのです。いま、日高山脈以西では、大都市が近いことからも各地で太陽光発電所の建設や木のチップを使うバイオマス発電などのための森林伐採が進行しています。これ以上、シマフクロウの森が失われるのを防ぐためにも、日本野鳥の会ではウトナイ湖から将来の日高・道央・道南のシマフクロウ生息地の保全を進めていきます。
(日本野鳥の会保全プロジェクト推進室保護区グループ・瀧本宏昭レンジャー)