日本有数の港湾で内貿貨物取扱量全国1位を誇る苫小牧港の昨年を振り返ると、さらなる飛躍に向けたさまざまな動きがあった。
まずは苫小牧港の未来像を示す苫小牧港長期構想がまとまり、新ビジョンとして(1)国内物流の効率化を先導する港(2)北海道の「食」を世界へ届ける港(3)道民・国民の食と暮らしを強くしなやかに守る港―の三つが盛り込まれた。具体化に向け、西港区で新しい岸壁整備がスタート。欧州と東アジアを最短で結ぶ海上物流ルートの北極海航路を利用し、国内で初めてコンテナ貨物が苫小牧港に荷揚げされた。コンテナ貨物の小口混載輸送もマレーシアなどと実績を重ねつつある。市内では物流倉庫の建設ラッシュが続き、苫小牧は物流拠点として注目されていると改めて感じた。
特別目的会社北海道クールロジスティクスプレイスが東港区の背後地で建設を進めている大型冷凍冷蔵倉庫が今春完成し、当社で運営していくことになる。収容能力は道内最大級の2万トンを誇り、農産物、水産物、畜産物、加工食品などを保管できる。メリットとして道内で収穫された農水産物の品質や鮮度を長期間保持でき、通年出荷が可能なため物流の平準化が挙げられる。保管する農水産物を活用して加工食品を作る工場の誘致とともに、苫小牧港と新千歳空港のダブルポートを生かした食の物流エリア形成を目指したい。
平成から令和の時代に突入した中、日本は人口減少社会が進んでいく。単純に考えれば物流量も比例して減ることになり、経済状況に不透明感が漂う。だからこそ民間主体で潜在的な顧客ニーズをつかみ、新たなサービスをプロデュースし提案することが欠かせない。大型冷凍冷蔵倉庫はそれを具現化したもので、当社主力の倉庫、飼料サイロ、オイルターミナルに続く第4の事業と位置付けている。
1960年に開設された当社は、今年で創立60周年を迎える。苫小牧港をベースに公共的な使命感を持ち倉庫を整備し貨物を取り扱い、北海道経済の発展に少なからず貢献してきた。国連が採択した課題克服の取り組みを示すSDGs(持続可能な開発目標)の視点で10年後の当社はどうありたいか、若手社員を中心に将来ビジョンを策定した。さらなる地域貢献に努めながら世界に挑戦する物流企業を目指し、BCP(災害時の事業継続計画)の実効性を高め、環境に配慮するとともに、社員一人ひとりがモチベーションを高く成長できる仕組みを築いていく。常に新たな挑戦を続けたい。(おわり)
1960年5月創業。資本金8億7612万円。従業員数271人。倉庫業、港湾運送業、貨物自動車運送業、通関業など。苫小牧市入船町3の4の21。