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  • ニュース, 夕刊時評
  • 2019年12月21日

  大人が話している不確かな情報を小耳に挟み、声を潜めて周囲に広める子どもがいた。差別は、そんなふうに次の世代に伝えられていったのだと思う。

   人は平等。差別や陰口は良くないこと。理念は知っていたはずなのに、その理念と、現実の世界の大人たちの言動との食い違いを、どう処理すればいいのかが、子どもたちには難しい問題だった。少しずつ聞こえてくるあいまいな情報が、いつの間にか心の中におりのようにたまって消えない。北海道育ちにとって、アイヌ民族差別とは、そういう問題だと思う。

   誤りを広めない。軽薄に話さない。そう考えながら、正しいと思われる歴史や情報を探して学び、誤った情報や忌まわしい記憶を少しでも修正して、次の世代に、より正しく伝えること。言うのは易しいが、実践は難しいことだ。

   来年4月24日、白老町のポロト湖畔一帯に民族共生象徴空間(ウポポイ)が、開設される。国立アイヌ民族博物館、国立民族共生公園、慰霊施設の整備工事が進み、19日には博物館の内部が報道関係者に初めて公開された。慰霊施設には、全国の大学が、時には無断で墓から掘り出し、研究資料として長く保管していたアイヌ民族の遺骨の移送・集約が行われた。

   全国から修学旅行生や旅行客が訪れ、アイヌ民族と北海道の歴史や文化を学ぶ施設。よりよき共生のため、まずは道民が何度でも訪ね、学ぶ施設に―と思う。(水)

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