前回と今回

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  • 2019年12月12日

  今年を振り返って記憶に残る出来事に、10月の消費税増税がある。軽減税率が初めて導入され、店では複数税率対応のレジなどが必要になった。この話が報じられた際、店や店員は消費税の導入や増税のたび、店内表示価格や各種システムの作り替えに追われ、客には便乗値上げを疑われ、理不尽な思いをしてきたことも伝えられた。

   5年前の消費税増税では、主に消費者と企業・生産者の負担が報じられた。増税が4月で「値上げの春」と重なり、消費者は家計を圧迫されるし、企業は買い控えで売り上げ低迷に陥ったからだ。だから今回の増税では値上げの時期を避け、軽減税率の導入によって店の負担にも目を向けられ、増税に苦労する人の多さが改めて認識されたように思う。

   増税後、こんなことも分かった。不適切経理などによる国費の無駄遣いが約1002億円(会計検査院の2018年度決算報告)あったこと。招待基準のあいまいな内閣総理大臣主催の春の公的行事の公費支出が年々増え、今年は5500万円を超したこと。それでも導入された増税…が心に残った。

   消費税増税には、すべての国民で負担できる利点がある。ただ、それなら個々が負う痛みは相応に還元されるべきだし、国費の無駄遣いは導入前に無くすべきだ。今からでも遅くないので取り組んでほしい。私たちがしている節約を見習うだけの話だ。(林)

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