大波

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  • 2019年12月11日

  苫小牧市の西部が、この冬初めてふんわりと白い雪に覆われた休日の朝、雪遊びをする子どもの元気な声が聞こえた。歓声が心地良く、うれしくなる。

   家人は、隣の町内から遊びに来た友人に驚かれたことがあるそうだ。「うちの方では、子どもの声なんてぜんぜん聞こえないよ」

   新聞の中面の、下の方にあった3段見出しの地味な記事を思い出して読み直した。見出しは「出生数90万人割れ確実」。厚生労働省の人口動態統計の速報によると、2019年に生まれる子どもの数が、1899年の統計開始以来、初めて90万人を下回るそうだ。1―9月の人数は前年同期を5・6%下回り、下落の幅は前年同期の倍だとか。12月まで通年の出生数は86万人程度にとどまる見込みだという。厚労省では90万人割れを2021年と推計していたが、2年早まることが確実になった。

   過去の統計を探して確かめると戦争直後の第1次ベビーブームの1949年は270万人だった。その子どもの世代に当たる第2次ベビーブームの73年が209万人だ。少子化は将来を考える際、枕ことばのように使われることが多いが、その減少の幅は数%ではなく、2分の1とか3分の1の単位なのだ。大きさに改めて驚く。

   地方や国の形を変える大波となって、猛烈な勢いで押し寄せている少子化。きっと地方ほど波は高い。問題は年金の将来や働き手の減少だけでなく、広く深い。(水)

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