胆振東部地震で自宅が損壊した安平町の70代男性が、ローン返済ができない大規模災害被災者を救済する「自然災害債務整理ガイドライン(被災ローン減免制度)」の適用を求めて申し立てた特別調停が20日、札幌地裁苫小牧簡易裁判所で成立した。男性が地震前に組んだ住宅ローンの大半が免除される。札幌弁護士会によると、胆振、日高管内での同制度に基づく調停成立は初という。
1995年に建てられた木造2階建ての男性の自宅は、同地震で壁に亀裂が入るなどし、町から一部損壊の判定を受けた。修繕には約220万円が掛かることから、経済的な負担が増大。生活再建を進めるため、借入先の住宅金融支援機構に同制度の利用を申請した。
調停内容は、住宅ローンの残高約590万円のうち約480万円の返済を免除し、自宅の資産価値分に当たる約110万円を5年間掛けて返済するもの。
同制度は、被災前に住宅ローンや事業ローンなどを組んでいた被災者が破産手続きなど法的な手続きを取らずに、借入先の金融機関などとの話し合いで減額や免除を受けることができる仕組みで2016年4月にスタートした。
災害救助法が適用された自然災害で被災した個人や個人事業主が対象。弁護士など登録支援専門家による手続きのサポートを無料で受けられる。
通常の債務整理手続きとは異なり、手元に財産を残すことができるのが利点。今回の男性も約200万円の財産を残しつつ、制度適用が認められた。個人信用情報として登録されないため、新たな借り入れへの影響もないという。
制度を知ってから1年越しでの調停成立に、男性は「本当にほっとした。これでようやく自宅を直し、前に進むことができる」と笑顔。「町内には生活再建のめどが立たず悩んでいる人も多いが、この制度に助けてもらうことで前へ進める人もいるのでは」と話した。
札幌弁護士会によると、胆振東部地震での被災に伴う申請は31件。大多数が札幌市民からで厚真、安平、むかわの各町民からの申請は今回のケースを含めて3件だけ。
今回の申請を担当した、苫小牧の大谷和広弁護士は「被災した住民の生活を支えることで被災地の復興をサポートする仕組み。被災前に組んだ住宅ローンに苦しんでいる人がいれば、ぜび制度の活用を検討してほしい」と呼び掛ける。
制度に関する相談は、札幌弁護士会法律相談センター 電話011(251)7730。