支笏湖周辺をイメージする色といえば「あお」を思い浮かべます。四季の移ろいとともにその色合いは変化するものの、「あお」が良く似合う地域だと思っています。
日本人は四季を二十四節気で区分するように、色に対する感性も豊かで日本の伝統色といわれる色の中には、青系だけでも「瑠璃色」や「あさぎ色」など、その数は優に50色を超えます。
漢字一つとっても「青」は総称的に使われていますが、他にもいくつか意味合いによって使い分けています。一筋の飛行機雲で仕切られた抜けるような空は「青」、湖を360度囲む恵庭岳や樽前山をはじめとする山々の森は「蒼」、過去30・7メートルを記録したこともある透明度の高い湖は「碧」という漢字がピッタリときます。「蒼」は草木が茂るさまなどを表し、「碧」は深い青色や青緑色の意味だそうです。
また、日本人は元来、緑も青色に広く捉えてしまうところがあります。「あお」とは発音しませんが、同じ青緑色を表す言葉として「翠」という字もあります。これらを見ていると、この地域に暮らす人々にとって「あお」は特別な色なのだと感じています。
夏の強い日差しは、より一層「あお」の色を際立たせ、冬の凛とした空気感とは異なる生命力に満ちあふれた力強さを感じさせてくれています。これから秋の訪れとともに、一瞬だけこの地域は錦色に染まります。
四季折々にいろいろな趣を見せ、人々の心を引き付ける美しい支笏湖の自然を私たちはいつまでも大切に引き継いでいかなければなりません。それがここに関わって暮らす者たちが共有する強い思いであり願いです。
8月から9月にかけて、日本の伝統色・露草色の語源にもなっているツユクサをこの園地でも見ることができます。花弁をつぶして指先を青くして遊んだ人も多いのではないでしょうか。たった一日しか咲かない、かれんではかない花です。花言葉は「懐かしい関係」。旧友との思い出にふけるのもたまには良いかもしれません。ここにも小さな「青」を見つけることができました。
(自然公園財団支笏湖支部所長、木林正彦)