戸田氏3選出馬表明 財政健全化推進の継続意欲などが出馬後押し 白老

  • ニュース, 白老・胆振東部・日高
  • 2019年8月31日

  30日の記者会見で白老町長選(10月15日告示、20日投開票)への3選出馬を正式に表明した現職の戸田安彦氏(50)=無所属=。2期8年の町政運営で力を入れた財政健全化のさらなる進展や懸案の町立国保病院の改築に加え、来年4月の民族共生象徴空間(ウポポイ)開業に伴う観光など地域経済の振興を自らの手で進めたいとの思いが、出馬の決断を後押しした。

   戸田氏は保守層の有力支持者や、後援会組織「戸田安彦と歩む会」からの要請を受けて今月、出馬の意思を固めた。その以前から、2期8年の町政運営で自ら進めた政策の継続や、公約で積み残した課題を3期目で具現化したいとの思いがあったとみられる。

   これまでの実績で特に自負するのが財政の健全化だ。1期目就任の2011年当時、戸田氏が言う「借金だらけの町役場」だった。日本の好景気の波に乗ったインフラ整備など公共投資に力を入れた時代の付けが回り、多額な起債(借金)で町財政は危機にひんしていた。そのような状況の中で引き継いだ新財政改革プログラムの推進や14年度スタートの財政健全化プランの実行で、理事者や職員給与カットをはじめ徹底的に歳出を抑制。一般会計で一時172億円に膨らんだ起債残高を18年度には102億円にまで減らし、底を突きそうになっていた財政調整基金(貯金)も18年度で9億円にまで積み増すなど実績を上げた。

   戸田氏は町財政の厳しさがまだまだ続く中で、手掛けた財政健全化の取り組みをより推進する考えでいるが、町民からは「健全化はさまざまな犠牲、我慢の下で成り立っているに過ぎない」との声も出ている。活動助成金の抑制に市民団体の関係者は「行政と住民の協働をうたいながら逆行している」と憤り、「老朽化した公共施設の改修が後回しにされ、必要な耐震化も進まない」と嘆く町の関係者もいる。そうした不満や批判もある中、選挙で支持を集める上でも、財政健全化と町民の活動支援を含めた市民サービス向上の両立を図る姿勢を打ち出す必要があろう。

   懸案の町立国保病院改築問題については、今月の町議会特別委員会で戸田氏が「病床数は20床以上、介護老健施設を存続」とする改築の基本的方向性をようやく示したものの、新病院の開設時期などは明言を避けた。改築問題が浮上してから長い年月がたつ中、いまだ具体的方針が見えない状況にいら立つ町民は少なくなく、3期目公約でどう示すか注目される。

   年間100万人の来場を目標に掲げるウポポイを生かした地域振興策は、公約の核に位置付けるとみられる。町が今春実施した町民意識調査では、ウポポイ整備により地元経済活性化が期待できる―とした人は回答者全体の4割程度にとどまった。開設後の経済波及効果を地元経済界や町民が実感できる施策も焦点だ。

   最大の課題は、高齢化と人口減少問題だ。白老町の高齢化率(全人口に占める65歳以上の割合)は7月末時点で44・8%に達し、人口の半数近くが高齢者という実態。人口減少も進み、45年には7000人台になると推計されている。町は現在、まちづくり最上位計画の次期総合計画策定を進めているが、3選を狙う戸田氏自身の考え方、政策の方向性にも有権者の目が注がれることになる。

   一方、町政運営のかじを取る戸田氏のリーダーシップに疑問を投げ掛け、対抗馬の擁立を模索する動きもあるが、具体化するかどうかは不透明だ。一時出馬に意欲を示した保守系の男性は断念し、名前が浮上した別の男性は「正式に要請されても出ない」と言い切った。仮に戸田氏以外に立候補を表明する人が出なければ、2期連続の無投票となる。

  (白老支局・下川原毅)

過去30日間の紙面が閲覧可能です。