「水鶏」という鳥をご存じでしょうか。みずにわとり? これは「クイナ」と言います。クイナは、ハトくらいの大きさの鳥で、くちばしが長く赤いのが特徴です。水辺に生息し、昆虫や魚、草の種などを食べます。北海道には夏鳥として渡来し、冬は本州中部以南で過ごします。
クイナは、普段から湿地の草むらにいることが多く、めったに姿を見せません。さらに、警戒心がとても強く、危険を感じると身を隠せる場所に逃げてしまいます。そのため、レンジャーの中でもその姿を見たという者は少ないです。ただ、クイナは、夕方や明け方近くに甲高い声で「クィ、クィ、クィ」と鳴くことから、その存在を知ることができます。
私が苫小牧に来る前までレンジャーをしていた根室ではクイナの声をよく聞いていたのですが、ウトナイ湖ではその声を聞くことがありませんでした。「ウトナイ湖にはいないのかな」と思っていたのですが、先日、ウトナイ湖の湿原でとうとうクイナの声を聞くことができました。私は、うれしくて思わず「クイナだ!」と声を出してしまいました。姿が見られなくても声を聞くだけでうれしくなります。
ウトナイ湖でのクイナの目撃記録を見てみると、ネイチャーセンターを開設した1982年から記録はありましたが、多くありません。やはり見つけにくい鳥なので、生息状況がよく分からないようです。ここ最近では、クイナの生息地に再生可能エネルギーの施設が設置されるといったことも発生しています。タンチョウやオジロワシなどのような目立つ鳥ではないため、その存在をあまり気にされることなく、生息地が開発されてしまうのです。
クイナのような生息実態が分からないような種は、見たことを記録しておくことが大切です。クイナの声を聞いた、または姿を見ましたら、日時や場所、数などの記録をお手持ちのノートやスマートフォンに残してみませんか。もしかすると、その記録が生態の解明や、保全につながるかもしれません。
(日本野鳥の会ウトナイ湖サンクチュアリ・稲葉一将レンジャー)