民族衣装を身に着け、楽しく踊る地元の子どもたち=2018年6月この民芸市は、職人とバイヤー、個人客が情報を交換(こうかん)する有効な場にもなっている=2018年6月 北ヨーロッパのバルト海にのぞむラトビアという国では、手工芸品作りが大変さかんです。毎年6月の第1週末に、首都リガで国を挙げての民芸市が開かれます。
会場はリガ中心部から車で東北へ約20分のところにある湖畔(こはん)の森。東京ドーム約18個分の広さの森は、四つの地方から17~20世紀の古民家が移築され「民族野外博物館」となっています。
2018年の6月、わたしはこのラトビア民芸市を訪ねました。会場に入ると、森の入り口にある広場で、民族衣装(いしょう)を着た若い男女や子どもたちが伝統楽器の生演奏に合わせて踊(おど)っていました。わたしも地元の人々にさそわれて一緒(いっしょ)に踊りながら、なぜか胸が熱くなってきました。同年、最初の独立から100年をむかえたラトビアですが、特に中高生たちが、自国の衣装や音楽、踊り、文化を深く愛し、その喜びを体いっぱいで表している、そんな感動が伝わってきたのです。
森の小道の両わきには、250以上ものブースが並びます。自家製のはちみつやハムなどの食品から、人気のかご製品、木工品、陶器(とうき)、布のおもちゃ、麻(あさ)製品、毛糸の手袋(てぶくろ)、サウナ帽(ぼう)など、ありとあらゆる手工芸品や生活雑貨が売られていて、森の木々に美しくディスプレーされているのです。おなかがすいたら野外広場のフードマーケットで郷土料理もいただけます。
美しい森と伝統舞踊(ぶよう)、民芸市すべてが、現代のラトビアの幸福と豊かさを表していると感じました。
(旅行ジャーナリスト・鈴木幸子)