高感度ひずみ計設置場所の分布図(産総研地質調査総合センターのパネルより転載(てんさい)) 南海トラフ巨大地震(きょだいじしん)は、陸のプレートの下に海のプレートが沈(しず)み込(こ)むことで発生します。ふだんはくっついているプレート境界が、深さ10~30キロメートルで大きくすべり、揺(ゆ)れや津波(つなみ)を引き起こします。
一方、同じプレート境界でも、より深い30~40キロメートルでは、数カ月から1年に一度、数日から1週間かけて、数ミリから数センチ動く「ゆっくりすべり」という別の現象が起きています。
この現象の変化が巨大地震と関連する可能性があるため、研究と監視(かんし)が進められています。このデータは政府が発表する「南海トラフ地震臨時情報」にも活用されています。
産業技術総合研究所の北川有一さんの研究グループは、震源域内の20カ所に「ひずみ計」を設置し、この現象を詳(くわ)しく調べています。ひずみ計は、地下数百メートルに設置した円筒(えんとう)形の超(ちょう)高感度センサーで、岩盤(がんばん)のわずかな伸(の)び縮み(原子1個分に相当する長さの変化)もとらえられます。
北川さんは「南海トラフ巨大地震は(30年のうちに80%と高い割合で)みなさんが生きているうちに起こるでしょう。問題はいつ来るかなので、ぼくたちも努力しています」と言い、みんなも「日ごろから備えてほしい」と話してくれました。
(科学ジャーナリスト・瀧澤美奈子)