戦後間もない1940年代後半に生まれた、いわゆる団塊の世代が、75歳以上の「後期高齢者」に仲間入り。70年の前後から「車のある生活」を、ほぼ半世紀に渡って過ごしてきた世代にも、いよいよ車のない生活が近付いてきた。結婚や子育て、通勤から趣味まで、必ず立ち会ってきた愛車たちとのお別れの時だ。
「運転免許証の自主返納」は、これまで親や年長のおじ、おば世代の宿題と思っていたが、もう違う。「また高齢者の交通事故。アクセルとブレーキの踏み違えか」。不可解な事故が連日のように報道される。当事者が自分と同年代と知って、隠れるようにため息をついたことが何度かある。「どうして?」という質問が、問い詰めるように聞こえるのだ。
自分は2年ほど前に手術の必要な病気になったのが思案の始まりだった。家人を助手席に乗せて近所の門柱に衝突した頃だ。幸い歩行者はおらず、けがも無かったが車は大破した。今でも家人に「怖かった」と言われて返す言葉がない。
帰省した子どもや孫にはレンタカー代を進呈し、空港への送迎はやめた。買い物や通院。検討事項はまだまだある。有効期限は誕生日の1カ月後まで―と免許証に印字されていた。安全を第一に冷静に、次の誕生日を迎えたいものだ。(水)