企業トップに聞く 9 設備投資を着実に フェリー旅客 コロナ禍前に回復も 苫小牧港開発 関根(せきね) 久修(ひさのぶ) 社長

  • 企業トップに聞く2024, 特集
  • 2024年1月30日
企業トップに聞く 9 
設備投資を着実に フェリー旅客 コロナ禍前に回復も 
苫小牧港開発 
関根(せきね) 久修(ひさのぶ) 社長

  ―2023年を振り返って。

   「5月に新型コロナウイルスが『5類』に移行したことで、社会経済活動が緩やかに回復し、フェリーの旅客もコロナ前の19年比で約9割まで戻り、月によっては同じ水準だった。経済全般の状況が良ければ、今年はコロナ前に戻るのではないか。

   一方、荷動きは全般的に若干減っている。物価高や在庫がさばけていないことなどが理由。堅調ではあったが、トラックなどの取り扱いは22年度が高水準だったこともあり、前年度比で減少した。

   不動産部門は、ウトナイ地区で住宅用地の第3期分譲を始めた。全国で住宅着工件数が減り、心配もあったが、立地の良さが奏功し、引き合いが強かった。工業用地の賃貸も比較的堅調に推移している」

   ―次世代半導体製造ラピダスの千歳市進出の影響は。

   「周辺で関連産業が立地し、雇用が生まれれば、住宅需要も出てくる。中長期的にみれば、苫小牧にとって大きなビジネスチャンス。生産資材は苫小牧抜きには動かせないだろう。物流と、産業や住宅用地の両方の需要をうまく取り込んでいきたい」

   ―港湾労働者の人材不足への対応は。

   「生産年齢の人口減や地域への大企業進出で、(人材確保の)競争は激化していくだろう。作業の効率化や省人化、働き方改革を同時に進め、これからの姿を考えていきたい。一足飛びには解決できない問題で、地道な対応を積み重ねていきたい。

   港の役割や仕事内容を伝える出前講座など、地元の子どもたちに関心を持ってもらう取り組みも続ける」

   ―脱炭素化の取り組みは。

   「新本社の建設やフェリーターミナルのLED(発光ダイオード)化などにより20年度時点で、苫小牧港の港湾脱炭素化推進計画にある、30年までの二酸化炭素の排出削減目標(13年度を基準に48%削減)をクリアしている。今後も所有地で太陽光発電事業を展開し、自社の脱炭素化や地域企業への供給を進める。

   25年には商船三井さんふらわあが、LNGフェリーを大洗航路で就航する。意思疎通を密接にしながらしっかり対応し、地域の脱炭素化に貢献したい」

   ―今年の展望は。

   「経済環境にリスクはあるが、緩やかな回復基調が続くとみている。生命線のフェリーの安定運航を維持しながら、不動産部門も積極的に物流業などの需要を取り込んでいきたい。設備面では、24年度までの中期経営計画に基づき、ターミナルの耐震化やバリアフリー化を進めている。大きな目標『安全・安心・快適なフェリーターミナルの構築』に向け、着実に設備投資を進める。今後のビジネスの芽をどのように取り込むか検討していく年としたい」

   メモ 1958年設立。苫小牧西港フェリーターミナルを運営し、本道と本州間の物流を下支えする。従業員数は現在110人。

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