大みそかは愛知県の96歳の祖母宅で過ごした。娘であるわたしの母はすでに他界し、一軒家で一人暮らしをしている。同じ通りに住む人たちも亡くなられたり引っ越されたりして、新しい世代の人たちが建て替えて住み始めた。子どもの頃からのなじみだった急勾配の通り。学校帰りは子どもたちが集まり、よくこんな急な坂でと思うが、騒ぎながらドッジボールをした。40年前のことだ。そりゃ人も入れ替わる。
「今夜は紅白を見ようよ、紅白!」とわたしがテレビを指差しながら言うと「見ない見ない、誰も知らんから」と祖母が答えた。「きっと知ってる人もいるよ、YOASOBIとか」。わざと若い人たちの名前を挙げると、中学2年の娘が笑った。
弟夫妻もやってきて義妹が作ってくれたスキヤキをいただいた。愛知県の大みそかといったらスキヤキなのだ。甘辛の牛肉とハクサイ、シイタケ、ネギを溶き卵につけて。懐かしい地元の味だ。わたしはお酒を飲まないこともあるのか、長い時間をかけてごはんを食べるのが苦手で、この夜も20分で食べ終わる。
紅白歌合戦をBGMにカードゲームを楽しむ。「ドミノ!」と娘が言うと一斉にテレビに集中。水森かおりさんのドミノ倒しに息をのむ。「すごい!ドレスまでドミノで色が変わった!」テレビの中の人同様、こちらも興奮する。
今回の紅白歌合戦。どうしても見たい人が2人いた。伊藤蘭さんと大泉洋さんである。5年ほど前、三谷幸喜さん作・演出の舞台「子供の事情」で共演したお二人。キャストは10人。全員小学生でクラスメートという設定だったのだが、クラスメートの10人中2人が紅白に出るなんて!これは応援!と気合いが入る。「子供の事情」はミュージカル部分もあったから、全員で歌ったなあと懐かしく思い出す。
洋さんと言えば北海道出身。「水曜どうでしょう」は東京でも有名で、時折ステッカーを貼っている車も。洋さん=北海道はもちろん有名な話だが、共演した時には驚いた。道で「青木さやかさんですよね? 私ね、北海道出身なんだけど、洋ちゃんのことよろしくね!」と声を掛けられたのだ。しかも同じようなことが数回。「洋さん、北海道の人にまた声掛けられたよ!」と報告していた。
「いや~ありがたい!」と笑いながら答えていた洋さんも、紅白だとさすがに緊張するのだろうか。いよいよ前半最後。テレビを見ている祖母が「この人は知っとるわ」と言った大泉洋は、何しろ、かっこよかった。同級生として鼻が高い2023最後の夜。
(タレント)