ピンチをチャンスに

  • 土曜の窓, 特集
  • 2023年12月2日
ピンチをチャンスに

  幼い孫と遊んでいると、「この子たちが成人する頃、日本はどうなっているのだろうか」という不安に駆られます。地球規模では、各地で大きな軍事的衝突があり、また温暖化の影響はますます激甚化していて、人類としての将来に大きな不安があります。加えて、日本の財政を見ると、政府債務の対GDP比は260%以上と先進国の中で最悪で、発行されている国債の50%超を日銀が保有するといういびつな構造にあります。

   今後、少子高齢化がさらに進んでいく中で、20年後も日本の医療・福祉や公共サービスは維持可能なのか。また、海外との金利差の拡大や外貨を稼ぐ力の低下により、昨年来大幅な円安となり、再び以前のような円高に戻ることはないという見方も有力です。世界的に人口が増加する中、食料(約4割)とエネルギー(約1割)の自給率が低い日本が、20年後も生命を維持するために不可欠な物資を海外から買い続けることができるのだろうかと考えてしまいます。

   近代の日本は、明治維新、第2次大戦敗戦という2回の大きな危機がありましたが、欧米の良いものを精力的に学び、日本の良いものを巧みに残しながら、見事な経済的復活を遂げました。そして1970年代のオイルショックも、石油の海外依存度が極めて高い日本は沈没必至の危機と考えられていました。しかし、追い詰められた日本は官民、労使を挙げて省エネルギーや産業構造の転換に取り組んで高い成果を上げ、その後、「ジャパンアズナンバーワン」と言われる時代をつくりました。

   今の日本は、いわゆる「危機」というほどの明確な事象は起きていませんが、「ゆっくりと進む危機」の中にあると考えるべきです。子供たちの将来のため、大人たちが今、真剣に何を最優先にすべきなのかを考え、大胆な取捨選択をする必要があります。

   北海道には、広い土地、豊富な水、冷涼な気候などを生かした先端産業の育成、豊かな農林水産資源や再生エネルギー資源を生かした自給率の向上という面で貢献できる強みがあります。ピンチをチャンスに変える先頭を走ってもらいたいと思います。

   今回で12カ月担当したコラムが終了します。お付き合いいただき、ありがとうございました。「北海道の翼」AIRDOはコロナ禍という危機を乗り越え、北海道とともに再び成長できるよう全社員が懸命に頑張っています。どうぞ応援してください。

  (元AIRDO社長)

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