野球人の面影

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  • 2024年8月23日
野球人の面影

  夜半に静岡県にいる人たちと電話取材でやりとりした。21年前の2003年に国民体育大会秋季大会軟式野球成年の部に出場中の壮年チーム、苫小牧市役所クラブが栄冠達成した決勝の前夜、記事にするため監督・選手らに動向を尋ねた。小職の名を呼び、「あしたの朝5時に球場で待っているから。来てくれ」。周りの人たちが、どっと笑うのが分かった。声の主は、外部からの補強メンバーで加わっていた野手、本野伸一さんだった。

   強力助っ人だったことはもちろん、所属の一団を鼓舞する絶妙なムードメーカー。24年度も社会人野球クラブのオール苫小牧で総監督を務めていた本野さんだが、今夏、病に倒れて69歳で逝去した。

   先月、葬儀に出席した。故人の経歴として式で朗読されたのが、20年3月21日に掲載された本紙記事「ひと百人物語」の本野さんの回だった。苫小牧出身者。「野球生涯現役で」の見出しが躍り、野球に励んだ駒大苫小牧高と北海道産業短大(当時)での出来事、後に大昭和製紙北海道チーム入りした本人の回顧を掘り起こした記事は元同僚が書いていて改めて印象深かった。本野さんと昨年会った際、闘病中だとうかがった。小職の名を呼んで「体だけは大事にしろよ」と気遣ってくれた言葉を胸に刻んでいる。(谷)

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