標高

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  • 2024年4月17日
標高

  山高きが故に貴からず―。標高は、登山の目標を決める際の、上位の要素ではあるが、それがすべてではない。標高ばかりにこだわって低山を甘く見れば、危険は無限に大きくなる。少ない予算と時間の範囲で行き先を検討し、天候や体調を心配しながら過ごす出発の前が、登山の最も楽しい時間なのかもしれない。

   手元の地図を見ると北海道には標高2000メートル以上の山が、大雪山系だけでも10座以上あるようだ。このうち、頂上に何度か立てたのは、最高峰の大雪山系・旭岳(2291メートル)、十勝連峰の十勝岳(2077メートル)、日高山脈の幌尻岳(2052メートル)など4座だけだ。30歳の頃、初めて登った幌尻岳では下山中に両膝が笑いだした。泣き面でガクガクと歩く背中に山の先輩から「引きずってでも連れて帰るから心配するな」の声。大きなけが、道迷い、行動中の日没、ヒグマとの遭遇の経験がないのは「無事に帰るまでが登山」という教えを守ったからだ。

   仕事を離れたら、あれをしよう、これもしようと考えていた。しかし脚が不自由になり、機能訓練の目標を「一度、山に登ること」にしたが誰も相手にしてくれない。樽前山は今年、登山道再整備のため東ピークへの登山道を使用自粛とする方針とか。樽前山が遠くなった。(水)

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