退所ラッシュ

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  • 2024年4月12日
退所ラッシュ

  2016年末で解散したアイドルグループSMAPをモチーフにした本「もう明日が待っている」(文芸春秋)が売れていると聞き、早速読んだ。放送作家としてメンバー5人が出演するバラエティー番組に長年携わった鈴木おさむ氏の最後の著書。小説という体で解散の舞台裏を描いており、SMAP、ジャニーズといったワードは一切出てこない。

   SMAPの解散が決定的になったのは同年1月、番組内で行われた緊急謝罪会見。スポーツ紙の解散、独立報道を受けたものだったがダークスーツに身を包んだ5人のこわばった表情、異様なコメントに「あれは何だったのか」という違和感を覚え、独立を企てるとこうなるという圧力のようなものも垣間見えた。

   タレント、俳優の独立ラッシュが止まらない。円満感はなく挑戦というより、所属事務所への不満が先立っている印象。ユーチューブなどSNSの普及で、退所後も仕事がつながるようになったことも背景にあろうが新会社乱立で何だかぐちゃぐちゃしている。鈴木氏の本の中で長年世話になった事務所を離れ独立することは昭和、平成とタブー視されてきたが令和に入り、空気が一変したのは「あの放送があったからじゃないか」という趣旨のフレーズが頭から離れない。(輝)

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