例年だと3月には釣果が上がりだす苫小牧港・西港のカレイ釣りは今季、情報が乏しい。釣り人の経験則に基づけば2~3月は産卵のためにニシンが港内に入り、これに続いてクロガシラが釣れだす。ところが今季は魚影が薄く、カレイ狙いでさおを出す人はまばら。そうした中の3月中旬、取材に訪ねた入船公園で良型1匹を上げた釣り人に話を聞くことができた。
恵庭市の60歳代の男性がさおを構えていたのは入船公園のフェリー岸壁寄りで、工業港区につながる水路に面したポイントだ。水路は飼料などを積んだ大型の外航船が航行できるとあって、幅は400メートル、航路中央の最深部は14メートルある。
もっとも公園前は50メートル先くらいまで水深8・5メートル。その先の底はしゅんせつで掘り込まれて掛け上がりになっている。魚が居着きやすく、ときに大型のアブラコがここで釣れるのもうなずける。
男性のタックルは4メートル強の投げざお2本出し。リールは遠投の利く投げ釣り用のスピニングで、これに自作の遊動仕掛けをセットしていた。重りは小田原タイプの25号。餌は遠投が利くようにあらかじめ塩でしめたイソメだった。
魚信があったのは100メートルほど投げていたさお。「さお尻が上がって道糸が大きくふけ、たるんだ分を巻き取るとすぐに再び糸がふけた。もう一度、軽く糸を張った状態にして待っていると、数分後に三たびすっと糸がふけた」という。慎重に寄せて抜き上げると約40センチの良型クロガシラ。「冬明けの投げ釣りで待望のクロガシラはうれしい」と顔をほころばした。
西港での釣りでは、カレイも秋のアナゴも掛け上がりの奥側と手前側に仕掛けを投げ分けるという。この日は風がやや強かったのと、釣況の様子見の面もあったためさおは2本出しだったが、シーズン本番は3本態勢で臨むとか。本命以外も含めて魚影はまだ薄く、男性と入れ替わりで撤収していった早朝からの先客は釣果を得られなかったようだ。
この日は寒さがきつく北寄りの風がやや強かったこともあり、様子を見に公園を訪れる人がまれにいても、昼すぎまでさおを出す釣り人は他にはいなかった。
西港内では3月中旬からニシンの姿がポツポツと見えだしている。4月のカレイ釣りに期待したい。