行政相談委員 西村 穰さん(75)気持ちに寄り添う心掛けて 「そばにいる人たちに手を差し伸べる」教えを大事に

  • 時代を生きて, 特集
  • 2023年9月2日
「福岡での2年間は、お世話になった方から世の中での生き方をご指導して頂いた」と話す西村さん
「福岡での2年間は、お世話になった方から世の中での生き方をご指導して頂いた」と話す西村さん
行政相談委員中央研究会で箱根のホテルにて他の参加者と写真撮影を行う西村さん(左)=95年
行政相談委員中央研究会で箱根のホテルにて他の参加者と写真撮影を行う西村さん(左)=95年
大学生の時、秩父多摩国立公園の大菩薩峠を訪れた西村さん=68年ごろ
大学生の時、秩父多摩国立公園の大菩薩峠を訪れた西村さん=68年ごろ
苫小牧市内の自宅でくつろぐ西村さん=1955年ごろ
苫小牧市内の自宅でくつろぐ西村さん=1955年ごろ

  総務大臣から行政相談に関する業務の委嘱を受けた行政相談委員として、30年以上、住民の相談や苦情を聞き、行政や民間企業へ働き掛け、課題の解決に当たっている。多くの人と出会い、自分でできることを無理せず、そばにいる人たちに手を差し伸べることを心掛けてきた。

   1947年10月、穂別町(現・むかわ町)で生まれた。幼少期に苫小牧へ移り住み、若草町や幸町で暮らした。樽前山神社が矢代町にあった当時は、正月や例大祭の時など、幸町の自宅前を大勢の人が歩く光景が印象的だった。

   66年に苫小牧西高校卒業後、愛読していた雑誌の影響を受け、福岡県の法律関係の専門学校へ入学。中心街を歩くと、駅ビルに電車が出入りする情景や、粉から練ったうどんを実演販売する店、華やかな雰囲気の百貨店を見て、苫小牧との違いにカルチャーショックを受けた。

   福岡では、子どもを支援するボランティア活動にも参加。1年生の秋には行政書士試験に合格した。受験時に宿泊して世話になったホテルの主人や専門学校の教師の勧めもあり、日本大学法学部に編入学し、70年3月に卒業した。

   福岡を去る時、ホテルの主人から「私たちにお世話になったという恩義を感じているなら、そばにいる人たちに手を差し伸べてあげなさい」「自分でできることを無理をしないで、できるだけのことをしてあげなさい。それがわれわれに対する恩義のお返しになる」と言われ、人生の精神的支柱とした。

   大学卒業後、本店が苫小牧の菱中海陸運輸に入社。総務や人事関係の部署にいることが多く、当時の社長にかわいがられ、社会人としての心構えなどの指導を受けてきたという。仕事をしながら、ボランティア活動を通じた知り合いからの推薦もあり、84年3月に保護司、89年4月に行政相談委員となった。

   保護司は、犯罪や非行を犯した人の更正を支えるボランティア。2005年11月までの間、仮釈放や保護監察処分を受けた人と面談し「なぜ自分勝手なことをしたのか」「親やきょうだいのことを考えなかったのか」など、犯した罪の重さを考えさせ、諭しながら立ち直ってもらうよう対象者と接してきた。

   行政相談委員としては、毎月1回苫小牧市役所2階の談話室や自宅で相談を受け付け、10月の行政相談週間での一日合同行政相談所などで活動している。長年の活動が認められ、20年4月に藍綬褒章を受章した。

   苫小牧市を含め、市民からの問い合わせに対する行政の対応は「まだまだ改善するべきことが多い」と指摘する。行政相談委員として「相談者の気持ちに寄り添い、困っていることは何かをつかみ話を聴くよう心掛けている。80歳まで続けたい」とまだまだ意欲的だ。

  (室谷実)

  ◇◆ プロフィル ◇◆

   西村穰(にしむら・みのる)1947(昭和22)年10月7日、穂別町(現・むかわ町)で生まれる。苫小牧若草小、苫小牧東中、苫小牧西高、福岡県の専門学校を経て、70年に日本大学法学部を卒業。同年、菱中海陸運輸に入社。84年に保護司、89年に行政相談委員に。2012年5月に取締役を退任し同社を退職した。苫小牧市幸町在住。

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