◆脳のごみ、睡眠障害で不調に アミロイドβ蓄積

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  • 2023年8月24日
アミロイドβなどの除去は、主に睡眠中に進む

  連載最後の2回で、認知症の新たな危険因子として注目されている睡眠障害について解説します。アミロイドβ(ベータ)やタウと呼ばれるタンパク質が脳にたまることが、アルツハイマー型認知症の原因として重視されていることを既に紹介しましたが、近年、睡眠障害はこうしたタンパク質の蓄積を促進することが、動物実験や人での研究で明らかになりました。

   つまり睡眠障害は、アルツハイマー型認知症に伴う脳の変化を進めてしまうわけです。米国における研究で、睡眠障害はアルツハイマー型認知症のリスクを4倍に高めることも実際に示されました。

   その理由として、不要なタンパク質を取り除く脳のごみ処理システムが、主に睡眠中に働いていることが関わっていると考えられています。

   脳の周りを流れる脳脊髄液には、老廃物を運び出す役割があります。睡眠中は脳の一部の細胞が縮み、脳の隙間が広くなります。すると脳脊髄液が隙間を通りやすくなり、老廃物が効率的に除去されるようになります。睡眠障害が生じると、老廃物の除去がうまくいかなくなるわけです。

   重要なのは、高齢者は健康な状態でも、年齢が原因で睡眠障害が生じ得ることです。睡眠時間は加齢とともに徐々に短くなります。眠りは浅くなり、睡眠の質も悪化します。睡眠中に目が覚めてしまう中途覚醒や、予定していた起床時間よりも早く目覚めてしまう早朝覚醒もしばしば起きるようになります。

   大きな声ではっきりした寝言を言ったり、怖い夢を見て手足をばたばたさせたりする「レム睡眠行動異常症」は、レビー小体型認知症の前触れの場合があります。

   こうした高齢期の睡眠障害に適切な対策を行うことは、認知症予防に重要と考えられます。最終回では、良い睡眠をとるための対策について説明します。

  (下畑享良・岐阜大教授、イラストはスギウラフミアキ)

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