皮膚病以外の病気でも症状 難治性のかゆみ

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  • 2023年8月17日
かゆみは体内の異常を警告する役割も

  

   蚊に刺されて、かゆくて物事に集中できない経験をした人は少なくないだろう。激しいかゆみが続いたり、就寝中にかゆくなったりすれば、生活への影響が大きい。かゆみの解明に取り組む、順天堂大学大学院環境医学研究所・順天堂かゆみ研究センター(千葉県浦安市)の冨永光俊先任准教授に話を聞いた。

   ▽腎臓、肝臓病など

   「かゆみは体にとって必要な感覚。かゆい部分をかいて異物を除去し、その侵入を防いでいると言えます。体内の異常を知らせる警告の役割もあるでしょう」と冨永先任准教授。

   かゆみを起こす物質としては、自然界や体内にあるヒスタミンなど約40種類が知られている。かゆみを感じる神経に働き、通常よりも症状を強く、または弱くする調節物質には、オピオイドをはじめ少なくとも7種類あるという。

   アトピー性皮膚炎のように皮膚が乾燥している場合は、かゆみを感じやすい。「かゆみの神経が皮膚表面のすぐ内側まで来ていて、外界の刺激を受けて容易に興奮するからです」

   皮膚以外の病気でもかゆみが出ることがある。原因としては、「腎機能が低下し、人工透析を受けている患者や肝臓病の患者は皮膚が乾燥している。それにとどまらず、調節物質のオピオイドなどが病気ごとに、さまざまな程度でかゆみに関係しているようです」

   ▽かゆみを感じやすく

   治療は、ヒスタミンの働きを阻害する抗ヒスタミン薬が中心だが、他の物質に焦点を当てた薬もこの15年間に幾つか実用化され、難治性のかゆみに使われている。

   例えば、かゆみを誘発する「IL―31」の働きをブロックする注射薬が、アトピー性皮膚炎を対象に昨年承認された。透析や肝臓病に伴うかゆみにも飲み薬がある。いずれの薬も効果を維持するには治療を続ける必要がある。副作用があり、薬によっては医療費もかさむ。

   同研究所は今年、通常ならかゆみを起こさないわずかな刺激でも感じる「かゆみ過敏状態」の有無を推測する指標を見いだしており、「難治性のかゆみを解明する一歩になる」としている。

  (メディカルトリビューン=時事)

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   順天堂かゆみ研究センターの所在地は郵便番号279―0021 千葉県浦安市富岡2の1の1 2号館8階。電話047(353)3171。

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