6月23日、樽前山「お花畑コース」を散策しました。この日は雲が低く樽前山は中腹までしか見えず、気温も肌寒い状態でした。少し明るくなってきた午前7時すぎを待ち、入山しました。このルートは、ほとんど登らずにお花畑を散策できる私のお気に入りです。
まずは、落葉広葉樹林帯に入ります。林内は薄暗く、少ない光の下で生きていけるハナヒリノキが緑色の花を咲かせていました。周囲では、ウグイス、アオジ、ツツドリなどの森の鳥たちが鳴いています。
少し歩くと樹林を抜け、視野が広がります。「お花畑」です。ウコンウツギやエゾイソツツジは花期を過ぎてわずかしか残っていませんでしたが、白い小さな花が群れ咲くマルバシモツケの花が満開でした。写真で紹介したのはシラタマノキという植物の花です。かわいらしいつぼ型の白い花が枝先にまとまって鈴のように垂れ下がっています。ガクや茎は少し淡いあかね色で、葉は小さな楕円(だえん)形。草丈20センチほどですが、実はツツジの仲間で常緑低木です。花期を終えると1センチほどの純白の小さな玉のような実をつくります。かわいらしいこの実の姿がこの植物の名前の由来です。
気が付くと雲が上空に退き、さっきまで見えなかった支笏湖に少しだけ日が差し込んで、白い遊覧船が運航しているのが見えます。
暖かくなってきた周囲を見回すと、マルバシモツケの群落でタテハチョウの仲間のフタスジチョウが舞い始めました。マルバシモツケを食草とする彼らの繁殖飛行なのでしょう。少し遠い斜面では、ホオジロが2メートルほどの樹木のてっぺんで鳴いています。目立ちませんが、地上付近の岩の上でもビンズイがさえずっています。さらに、上空ではヒバリがピリピリ…とテリトリーを主張しています。夏は彼らが子孫を残すための重要な季節なのです。
今月もまたお花畑の様子を見に行こうかな。シラタマノキの「白玉」はできているのでしょうか。刻一刻と変わる自然の観察は楽しい発見の連続です。
(支笏湖ビジターセンター自然解説員 榊原茂樹)