苫小牧港は25日、開港から60年を迎えた。世界初の内陸掘り込み式港湾として造られ、1963年4月25日に第1船の石炭運搬船の入船式を行って開港。それから60年を経て、苫小牧、北海道経済を支える国内有数の国際貿易港へ成長を遂げた。物流拠点の機能にとどまらず、世界的な温暖化対策の動きを受けて、港湾地域全体の脱炭素化を図り、地球環境保全を担う新たな取り組みも始まっている。
「樽前浜」と呼ばれた苫小牧の砂浜に、港を造る工事が始まったのは、72年前の1951年の8月18日。石狩・空知地方で産出する石炭の搬出港として期待され、内陸を掘り込むという世界に例を見ない手法で建設された。63年4月24日に第1船の石炭運搬船が入港。大勢の市民が見守る中、翌25日に入船式が行われ、この日を開港日とした。
その後も物流港として港湾拡大の工事が続き、76年には苫小牧東部開発計画に絡んで東港区の整備がスタート。80年に第1船を迎え、99年には日本海航路のフェリーも就航した。
西、東両港の背後地には火力発電所や製油所、石油備蓄コンビナート、自動車部品製造など多様な企業が立地し、北海道随一の大規模工業地帯を形成。製品や資材を国内外と取引する物流港として利用が進み、81年に「特定重要港湾」、2011年には「国際拠点港湾」に指定された。
貨物取扱量は1960年代後半から右肩上がりで増加し、75年には道内1位に。2020年には国内3位の貨物量を記録した。22年には1億805万3737トンと過去3番目の多さとなり、10年連続の1億トン超えも達成。北日本最大の貿易港として成長し、地元苫小牧や北海道はもとより、日本経済を支える港として存在感を高めている。
次代を見据えた動きも始まっている。「環境価値で世界から選ばれる港」を将来像に掲げ、23年度中に苫小牧港管理組合が主導して「苫小牧港脱炭素化推進協議会(仮称)」を設置。苫小牧港全体から発生する温室効果ガス削減に向けた「脱炭素化推進計画」の作成に取り掛かる。環境負荷の少ない次世代エネルギーの水素・アンモニア供給拠点化も目指し、温暖化防止に貢献していく方針だ。
関係業界や地元経済界が切望していた東港区・周文埠頭(ふとう)の新岸壁整備も今春から始まった。水深9メートル、長さ270メートルの耐震強化岸壁で、27年度末の本格運用開始を予定。新岸壁の完成で荷役時間短縮など物流の効率化が期待され、災害時の緊急物資輸送拠点の役割も担う。
苫小牧港管理組合は開港60周年に合わせて今年、モニュメント設置や市民向けイベント、シンポジウム開催など記念事業を展開する。節目を機に「社会経済を支え続ける港として、新たな時代を切り開く戦略的な港湾運営に努めたい」としている。
苫小牧港の歩み
1951年 苫小牧港着工
63年 重要港湾指定。西港に第1船入港
65年 苫小牧港管理組合設立
66年 漁港区供用開始
72年 西港で太平洋航路フェリー就航
73年 原油タンカーのシーバース(海上桟橋)完成
75年 年間取扱貨物量が全道一(現在まで連続1位)
76年 東港区着工
78年 ネーピア港(ニュージーランド)と姉妹港締結
80年 東港区に第1船入港
81年 特定重要港湾に指定
85年 秦皇島港(中国)と友好港締結
88年 東港区中央埠頭供用開始
89年 外国貿易船1万隻目入港
97年 入船埠頭国際コンテナターミナル供用開始
99年 東港で日本海航路フェリー就航
2002年 勇払マリーナ供用開始
03年 年間取扱貨物量1億トン突破
08年 東港区に国際コンテナターミナル移転
同年 外国貿易船3万隻目入港
11年 国際拠点港湾に指定
13年 開港50周年
17年 北極海航路の一般貨物船初寄港
18年 「苫小牧港大規模掘込港湾施設」が土木学会推奨土木遺産に認定
20年 年間取扱貨物量が初の全国3位
23年 脱炭素化の苫小牧港CNP形成計画策定
同年 開港60周年