依存症やうつといった心の不調を防ぐには、メンタルヘルスの維持が大事だ。子どものうちから「自分ならできる」という自己効力感や思考の柔軟性といった非認知能力を育て、大人になってからメンタル不調に陥ることを防止する取り組みが行われている。
児童臨床心理学の石川信一同志社大教授らが監修する小学生版「こころあっぷタイム」は、4~6年生を対象としたプログラム。臨床心理学と、不安障害などに使われる認知行動療法を基に作られており、全12回(1回45分)で構成されている。
使用するテキストは漫画形式。不安やいらいらといった心のトラブルを抱えた登場人物の心理状態について児童が考える。その上で、自分の感情の種類や強さを理解できる「きもちセンサー」などのアイテムを使いながら解決法を学ぶ構成になっている。
高根小学校(埼玉県日高市)では2月、4年1組の24人が参加し、「こころあっぷタイム」の11回目の授業が行われた。
担任の藤野由里子教諭が、主人公が友達の物を壊し、謝ったが許してもらえずけんかになり、いらいらしているという例を示した。児童は、いら立たしさを解消する方法として、「冷静になって相手と話し合いをする」「もう一回謝る」といったアイデアを挙げた。
次に、藤野教諭が「3色だんご」というアイテムを使って、「落ち着いて問題を見つける」「たくさん方法を考える」「状況を想像して一番いい方法を使う」という解決に導くための3段階のステップを説明。また、この方法が自分と相手双方の気持ちに沿っているのかどうかも考えるよう促した。
授業の手応えについて、藤野教諭は「児童が落ち着いて相手の意見を聞いたり、認められるようになったりして成長している」と話した。
このプログラムは2018年にスタートし、これまで約70校で行われてきた。石川教授によると、授業を受けた子どもには、自己効力感の高まりや、良好な人間関係を築く社会的スキルの向上が見られるという。