スマホ認知症 過度な使用で記憶力低下 質の良い睡眠が重要

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  • 2023年4月5日
スマホ認知症の主な原因(左)と対策

  スマートフォンの使い過ぎにより、記憶力低下など認知症に似た症状を訴える若年者がいることから注目されるようになった「スマホ認知症」。病名ではないが、軽視できないという。

   「原因は脳の疲労でしょう。現時点で直接認知症に発展した症例は報告されていませんが、過度な使用を続ければ、将来的なリスクが高まる可能性はあります」と福井大学医学部付属病院脳神経内科の浜野忠則診療教授は話す。

   ▽問題は若者

   スマホ認知症は、アルツハイマー病など認知症のリスクが高い高齢者より、若年層で問題視されている。「日常的にスマホを使う高齢者は、使わない高齢者と比較して認知症の比率が低いと報告されているため、適度な使用であればお勧めできます。問題は、1日に5時間以上もスマホ画面を見ているような10~20代前半の若者の将来です。2060~2100年にかけて、アルツハイマー病患者がさらに増加するのではないかと警告する論文もあります」

   現時点では、スマホと認知症が直結しているとは断言できない。「しかし過度な使用により記憶力、学習機能、集中力の低下、メンタルの不調や不眠を訴える割合が若年者を含めて高くなるという論文が多数あります」

   ▽良質な睡眠を

   スマホ認知症は脳の疲労から来るものと考えられている。その原因について、浜野診療教授は(1)「スマホ依存」ともいえる長時間の使用(2)マルチタスク(3)ブルーライト、の3点を挙げる。

   マルチタスクとは、テレビや講義の合間にスマホを触るなど違う作業を同時に行うこと。だが人間は本来、一つのことにしか集中できず、不要な情報を無視するために脳(前頭葉)はエネルギーを浪費する。

   また、寝る直前まで画面を凝視してブルーライトを浴び続けると、脳が日中と勘違いして睡眠促進ホルモン「メラトニン」の分泌が抑制され、質の良い睡眠を取りにくくなる。

   「脳をゆっくり休ませることで、脳疲労による記憶力や集中力の低下が回復します。アルツハイマー病の原因物質であるアミロイドβ(ベータ)タンパクも睡眠中に体外に排出されますが、不眠が続くと脳にたまってしまいます。質の良い睡眠は最も重要です」

   「仕事や勉強以外でスマホなどの画面を見る時間は、1日2時間以内を勧めます」と浜野教授はアドバイスしている。

  (メディカルトリビューン=時事)

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