厚真町議会は30日に開かれた臨時会で、役場新庁舎の建設に伴って議論されていた、現庁舎をこれから観光資源や教育施設として存続させるか否かについて、4月の議員改選後に再検討することを決めた。住民団体から提出されていた存続を求める要望書の取り扱いについて、新庁舎周辺等整備調査検討特別委員会(下司義之委員長)から同日報告があり、要望書を全会一致で趣旨採択した。
現庁舎は当初、胆振東部地震に耐えた歴史的建造物として改修し、震災資料やアイヌ民族関連の埋蔵文化財などを展示する施設に改修する計画だったが、財源や維持費の負担面から解体する方向に転換した。
しかし、昨年12月に住民有志でつくる団体が、震災遺構、歴史的建造物として観光や教育に生かすよう存続を求め、要望書を町や町議会に提出。これを受けて同委員会が専門家による調査を行っていた。
27日に開かれた同委員会では専門家による調査報告が行われ、出席した北海道大学院工学研究院の小篠隆生准教授が「大変希少な特徴を持った空間構成で設計、建設された建築物。歴史的建造物として保存の価値がある。希少性などを考慮すると教育資源としても十分なものとなる」との見解を示した。一方で「耐震性と建物を維持するための収益を生み出す仕組みを考えなければ難しい」と課題も指摘した。
このため、要望書を趣旨採択する動議を可決し、専門家による調査内容を報告。町議会では、4月末までの現体制の任期内に結論を出すのは難しいとの判断に至った。
現庁舎の存続・解体についての議論は持ち越したが、町では全体スケジュールに影響はないとし、2023年度に各施設の基本設計を実施。役場新庁舎完成・供用開始は26年度中、文化交流施設は27年度供用としている。