宇宙の星々を巡る機関車の物語「銀河鉄道999」など壮大なスケールのSF作品で知られ、今月13日に85歳で亡くなった漫画家の松本零士さん。むかわ町の穂別富内地区でかつて廃線となった旧国鉄富内線の富内駅で、再び蒸気機関車(SL)を1日だけ走らせた際、事業の資金づくりに役立つようにと、イラストを提供するなどして取り組みの成功に協力していた。関係者が死を惜しんでいる。
松本さんが協力したのは、地域住民の有志でつくる「ほべつ銀河鉄道の里づくり委員会」が主催し、この頃恒例になっていたイベント「ほべつ銀河鉄道の夕べ」と抱き合わせる形で実施した、旧富内駅で再びSLを走らせる取り組み。
同委員会は1986年10月の旧富内線の廃止以降、旧富内駅舎や構内、線路を銀河ステーションと名付けて保存し、イベント開催を続けていた。その中で「廃線から15年となる2001年に、もう一度SLを走らせたい」との機運が高まり、準備を進めていた時、松本さんとのつながりが生まれた。
きっかけは、イベントに参加したことのある宇宙飛行士の毛利衛さんが、富内地区の取り組みを松本さんに紹介したこと。毛利さんは、旧富内駅に設置され、空に向かって走る機関車を連想する上に反らせて伸ばしたレールも考案し、同地区との距離が近く、取り組みに共鳴していた。
松本さんは「銀河鉄道999」が宇宙を走行するイラストを手掛けて提供。これを受けた同委員会は、2001円以上の寄付をしてくれた支援者への謝礼品として、イラストとサインが入ったオリジナルテレホンカードを5000枚限定で用意し、事業費の一部に充てた。
富内地区に汽笛がよみがえった2001年9月14日、旧富内駅舎周辺は鉄道ファン、松本さんの「銀河鉄道999」ファン、同町の住民や出身者などでにぎわった。
当時、同委員会の総務会計を担当し、現在会長を務める服部啓三さん(63)は「全国の鉄道ファンや宮沢賢治ファンなど多くの支援を受けたが、2001円以上の寄付をしてくれた人もいた。そのおかげでSLを走らせることができた」と当時を懐かしみながら、「まちづくりの一助として多大な協力をしてくれた」と感謝していた。