「あみゅー大博覧会」より (5) 約800点の昆虫標本

  • 特集, 苫小牧市美術博物館
  • 2023年1月5日
約90年前の昆虫標本とラベル、当館蔵

  最後の回は、1930年代に苫小牧で採集された約800点の昆虫の標本をご紹介します。苫小牧の昆虫標本は当館だけではなく、道内外の幾つかの博物館でも収蔵されていますが、その中でも最も古いものの一つです。

   標本の価値を高めているのが、標本を刺している針に付いている紙のラベルです。ラベルはその昆虫の出自を証明するもので、標本一つ一つに付いています。例えばラベルに「Hokkaido Tomakomai 8.3 1931 S.Ito」と記されていれば、「北海道苫小牧市で1931年8月3日にS.Itoが採集した」と読み取ることができます。昆虫は地域や環境によって、生息している種類が異なります。標本のラベルと昆虫の種類を調べることで、採集当時の自然環境や、現在と過去の環境の変化を知ることができる可能性があります。標本とラベルは人と自然環境の共存を考える上で、重要な情報を私たちに与えてくれるのです。

   では、90年前の苫小牧にはどんな昆虫がいたのでしょう?展示している標本には、クワガタムシやカナブン、カミキリムシなど甲虫が多く、次いでスズメバチなどハチの仲間が続き、不思議なものでは繭や卵の標本もあります。現在でも見られる種類が多い印象ですが、実は調査が進んでおらず、ハチの仲間や小さい昆虫などは種類もよく分かっていません。皆さんも標本を見て何か気が付いたことがあれば、ぜひ教えてください。

 (終わり)

 (苫小牧市美術博物館学芸員 江崎逸郎)

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