連載100回目に感謝 これからも傷病鳥獣現状発信

  • 救護室のカルテ, 特集
  • 2022年12月16日
これまでの連載記事。傷病鳥獣から頂く学びを、これからも伝える

  2022年も残りあとわずか。時の流れの早さを日々実感します。今年、ウトナイ湖野生鳥獣保護センターは設立20周年という節目の年でした。7月28日の設立日に合わせ、夏期はさまざまなイベントを実施し、これまで築いてきたことを振り返りつつ、新たな一歩を踏み出しました。

   そして、この連載も早いもので、シリーズ累計で100回目となりました。思い返すこと10年前、救護室で出合う傷病鳥獣たちの現状や当センターの活動などを知っていただきたいという思いから、「救護室のカルテから」の連載が始まりした。その後、「救護室からのメッセージ」「救護室から」と2度のタイトル変更を経て、現在に至ります。毎月、これだけの枠で発信させていただけることは、たいへん貴重でありがたくも、執筆経験のなかった私にとって決してたやすいことではありませんでした。それでも、今日まで書き続けてこられたのは、多くの方々の温かな言葉や応援メッセージが励みになっていることは言うまでもありません。紙面の向こうに見てくださっている方々を想像しながら、今も書いています。

   当センター開設からこれまで、救護室には約2700個体の傷病鳥獣が搬入されました。残念なことではありますが、そのほとんどが、私たち人間社会が原因でけがをした生きものたちでした。そのうち半数余りは回復し、なんとか自然に戻ることはできましたが、それ以外のほとんどの個体は命を落とし、またほんの一部の個体は、命は助かったものの、けがの後遺症で自然復帰できず、終生飼養となり、その生涯を救護室で過ごすことを余儀なくされました。

   私たちが伝えていきたいのは、このような現状がどこか遠い世界の話ではなく、身近な環境で起きている、ということです。私たちは、野生動物たちの事故やけがを決して望まずとも、実は私たちの暮らしが原因で彼らの命を脅かしている現実がある、ということです。その真実に向き合うことはたいへん心苦しいときもありますが、ぜひ「自分事」として、考えていただけたらと思います。皆さまの意識こそが環境や野生動物たちを守る、第一歩になるのですから。

  (ウトナイ湖野生鳥獣保護センター・山田智子獣医師)

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