うれし懐かしお客さん 小学生だった子も今や獣医学生に

  • 救護室のカルテ, 特集
  • 2022年10月21日
久しぶりのウトナイ湖を堪能する大須賀さん

  先日、懐かしいお客さんがウトナイ湖野生鳥獣保護センターを訪れてくれました。名前は大須賀詩織さん。鹿児島大学に通う、現役の獣医学部の学生さんです。

   彼女との出会いは16年前。私がまだ当センターで勤務を始めたばかりの頃でした。当時、札幌市の小学校に通っていた彼女はとにかく野鳥が大好きで、休日を利用しては、たびたびご家族とウトナイ湖を訪れてくれていました。「この間はこんな鳥を見たよ」とか「こんな羽根を拾ったよ」とか、無邪気に声を掛けてくれる女の子でしたが、すでに野鳥に関する知識は大人顔負けで、会うたびに積み重なっていく知識に私も驚いてばかりでした。

   彼女が小学校3年生に上がる頃、本州へと引っ越してしまいましたが、その後も北海道を訪れるたびにセンターに顔を出してくれたり、お便りをくれたり、また高校生の時は、彼女が取り組んだ野鳥の研究成果を発表していた学会で再会したこともありました。この時も、野鳥の研究家や多くの人々を前に堂々と話す姿には、ただただ驚かされるばかりでした。

   そしてそれから数年たち、今は獣医学部の4年生です。獣医学部は6年制のため、残り2年間ですべての課程を修了し国家試験に合格すると、獣医師免許を取得することができます。今度は獣医師同士、肩を並べて話ができる日が来ると思うと、不思議な感覚でもあり、うれしくもあります。

   当センターには毎年、小中学生の子やその保護者の方から、どうしたら獣医さんになれるか、野生動物に関わる仕事ができるかと問い合わせを頂きます。やはり、どの道に進むとしても勉学に励まなければなりませんが、まずは「動物や自然のことを好きでい続けてください」とお伝えしています。好きでいることは学びの原動力であり、また、さまざまな情報もキャッチしやすく、思わぬところで新たな出会いやチャンスにつながることもあるからです。

   ありがたいことに、今もかつての大須賀さんのように当センターにたびたび顔を出してくれる子どもたちがいます。そんな子どもたちやこれから出会うであろう子どもたちにとっても、学びと楽しさを提供し、夢を応援できる場所でありたいと心から思います。

  (ウトナイ湖野生鳥獣保護センター・山田智子獣医師)

過去30日間の紙面が閲覧可能です。