被災森林再生へ課題山積 造林に本格着手も道のり遠く 胆振東部地震4年

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  • 2022年9月6日

  胆振中東部を震源に道内で初めて震度7を観測し、関連死を含め44人が犠牲になった2018年9月の胆振東部地震発生から6日で4年を迎えた。被害の大きかった厚真、安平、むかわ各町のインフラ復興は進展したが、3町で計4300ヘクタールが崩壊した森林の復旧は今年3月末で全体の3%程度にとどまり、いまだ震災の傷跡を残したままだ。道や地元町など関係機関は今年度から本格的に造林を進めるが、地震被害としては明治以降で国内最大規模となった森を再生させる道のりは遠い。

   地震は甚大な山腹崩壊を引き起こし、胆振東部の森林資源や林業の生産基盤に大打撃を与えた。水を蓄えたり、土砂崩れを防いだりと森林が持つ公益的機能も著しく低下した。復旧に向けて道や3町、苫小牧広域森林組合、道森林管理局などは18年10月、「胆振東部森林再生・林業復興連絡会議」を設置。新たな土砂災害を防ぐ治山施設の整備や林道復旧を優先的に実施した。苗木の試験植栽で、崩壊林地での造林手法も明らかにした。

   被災した森林4300ヘクタールのうち、林業者や地元町などが持つ一般民有林は56%、道有林は44%。森の67%が天然林で、残り33%は人工林だ。関係機関による復旧は3月末までに131ヘクタールにとどまり、多くが手つかずのまま。自然の力で徐々に森を回復させる場所を除く、植林・緑化対象地に限って見ても復旧率は10%程度だ。

   このため、関係機関は、同連絡会議が3月に策定した実施計画に基づき今年度、森林造成に本格着手。植林をはじめ、震災から4年たち、劣化が進みつつある被害木の整理や有効活用も進める。造林は26年度までの5年間で集中的に実施。作業道となる林道の整備も27年度にかけて行う。

   3町の中で最大の被害となった厚真町では、全体の75%を占める3200ヘクタールが崩壊した。だが、復旧は21年度までに62ヘクタールと、被災面積の2%以下にすぎない。町の担当者は「もともとあった作業道が地震でまだ寸断された状態」と、復旧作業が思うように進まない背景を説明する。

   町も実施計画に沿って22年度から5年間を集中期間とし、今年度は75ヘクタールの被災木の除去、62ヘクタールの植林を実施するほか、約20キロの作業道も整備する。その後も年次ごと計画を立てて進める方針だ。しかし、倒木除去など整地だけでも1ヘクタール当たり約100万円の経費が掛かり、広大な面積の復旧には少なくても数十億円が見込まれる。町は21年度、森林再生・林業復興基金を創設し、企業などの支援を得て事業を進めるほか、国や道の補助金活用を目指すが、予算を円滑に確保できるか課題を抱えている。道内の林業労働者の3割が60歳以上と高齢化する中、作業に当たる人材確保にも迫られる。

   植林後も手入れなどが必要で、元の森の姿を取り戻すまでには長い年月がかかる。厚真の基幹産業の林業復興に向けても、町産業経済課の担当者は「被災木を整理しながら植林を続け、再生していきたい」と話している。

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