「苔(こけ)の回廊」についての問い合せが非常に増えています。苔の回廊は樽前山の北面・モラップ地区にある涸れ沢・楓沢の一部を指し示しています。以前は、大雨災害の影響で2014年9月から立ち入ることができなくなっている「苔の洞門」に関する問い合わせの方が多かったものの、近年では問い合わせ件数が「苔の洞門」を「苔の回廊」が上回ったと感じています。
苔の回廊は切り立った壁面を覆うコケが非常に美しく、壁面の間に立つと別世界に迷い込んだような気さえします。この特異な地形は、火砕流堆積物が冷却した後、土石流による浸食によってできたものだと考えられています。この火砕流堆積物は保水力の高い溶結凝灰岩からできているため、コケ群落は支笏湖から発生する霧と岩に浸透した雨水によって育まれています。詳しい調査は行われていませんが、苔の洞門と同様100種程度のコケが生息していると考えられています。北海道も最近、蝦夷梅雨と呼ばれる雨続きの天候ですが、コケの観察には適しており、コケが青々と茂っていて美しいです。
インスタグラムなどで見つけた若い方も多いのか、案内所では軽装の方なども苔の回廊への行き方を尋ねてきます。また、現地でも水も何も持っていない方、サンダルやパンプスの方なども見かけます。写真を見て、「キレイ!行きたい!」と思う方が多いのだと思いますが、そこにたどり着くための歩行距離や足元の状況なども分からず気軽な感じで出向いてしまう方も少なくないのでしょう。
俗に言う”インスタ映え”で集客するプロモーションが主流の現代において、1枚の写真で引き付けることの怖さを感じます。現地の状況を把握した上で、しっかりとした装備で出掛けたいものです(崩落箇所も多く確認されていますので、ヘルメットの装着推奨)。ガイド付きでコケを観賞しに出掛けたい方は、支笏湖温泉旅館組合主催の支笏湖体験物語の楓沢トレッキングをご利用ください。
(支笏湖ビジターセンター自然解説員 佐々木香澄)