早春から初夏に釣り人を熱くさせる海サクラマス。魚体の美しさと力強いファイト、少ない個体数ゆえの難易度から人気の魚だ。6月上旬、苫小牧市内の弁天海岸で今季の初釣果を上げた釣り倶楽部の担当記者がリポートする。
渓流のヤマメが降海したサクラマス。春、幼魚で海に下り、北海道東方海域を回遊して大きく成長する。翌年の夏、秋の産卵期を生まれた川で迎えるために沿岸に来遊する。
海岸からルアーやフライで狙う東胆振のサクラマスは例年3月下旬、早場の苫小牧港・東港周辺で始まる。5月には市街地から白老にかけて釣れるようになり、6月が最盛期。同時に東胆振では5月から鵡川、安平川、白老川、敷生川、登別川の河口が規制対象となり、規制区域内の釣りは法と規則で禁止されている。
入釣したのは弁天海岸。安平川の河口規制地点(左右両岸とも1キロ)から苫小牧港・東港の一本防波堤までがポイントだ。現地には午前4時半に到着。気温が6度と低く、南東風がやや強いためか釣り人は少ない。タックルは10・6フィートのさお、4000番台のリールにPEライン1・2号、同3号のスペーサーを4ヒロつなげ6号のフロロカーボンをリーダーで結んだ。システムは魚との波打ち際のせめぎ合いで糸が切れた悔しさが教訓になっている。ルアーは35グラムのジグ。イワシカラーを選んだ。
釣り方は表層ただ巻き。ルアーを投げてリールを巻く。1時間半ひたすら投げて巻いた。見える範囲に釣果は無く、人に目立った動きはない。海鳥もいない。
魚っ気がない―。気持ちに迷いが生まれ「白老に行こうか」と考え始めた午前6時15分ごろだった。80メートル投げたジグを30メートル辺りまで巻いたところでリールのハンドルがロック状態になった。反射的にさおを持つ手に力が入る。しっかりとさおをしならせた。リールのドラグが鳴って抵抗の強さが伝わる。サクラマスは口の周りが弱い。力任せに寄せるのはばらしの元。波打ち際まで来た後、寄せ波に乗せてさおの反動とリーリングで砂浜に引き上げた。
何度も釣行しやっと手にした今季の初釣果。達成感と安堵(あんど)が疲労を消す。「やりましたね」。隣人に声を掛けられて気持ちの張りが緩む。「魚、いますね。元気が出ました」。隣人のキャスティングの音に鋭さが増した。胆振の海サクラマスは今が本番だ。