(動物の絵)身近な姿を個性豊かに

  • 特集, 苫小牧市美術博物館
  • 2022年6月9日

  苫小牧市美術博物館は26日まで、収蔵品展「動物の絵」を開催している。同展では、収蔵美術作品の中から動物が描かれた絵画12点を展示している。担当学芸員が作品の特徴などを解説する。

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   動物の姿は人々の想像力を広げる題材として、古くから世界中の美術作品の中で表現されてきた。美術の中の動物たちは、異なる時代や地域ごとの文化的・精神的土壌を映しながら、移り変わりを見せてきたといえるだろう。そうした多種多様な「動物像」の中で、本展では特に私たちの暮らしになじみ深く、また目にすることも多い身近な動物に焦点を当てた。

   作中の動物たちは、時に神性宿る気高い姿で、また時には親しみを覚える愛らしい姿で、個性豊かに造形されている。例えば、りんとした美しい立ち姿の親子馬を描いた遠藤ミマンと黄色く染まる原野に寝転ぶ馬を描いた砂田友治の作品は、馬の姿に対する造形的関心と画面の色彩構成という共通の関心により調和する。

   一方で、小出昭三による荒々しい筆致と情熱的で鮮烈な色彩を放つ牛の姿と、本間武男による晴れた青空と草原で柔らかな雰囲気漂う牧歌的な風景は、同じ牛の姿を題材にしながらもその印象は全く異なるものである。地域や世代、表現スタイルが異なる画家たちによって描かれた動物たちの響き合いを、ぜひ会場でお楽しみいただきたい。

   (苫小牧市美術博物館学芸員 立石絵梨子)

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