苫小牧市美術博物館は6月26日まで、企画展「アイヌ刀 エムシ・タンネプイコロ・タクネプイコロ」を開催している。担当学芸員がアイヌ刀の種類や用途について3回にわたって解説する。
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アイヌ刀は蝦夷刀(えぞとう)とも呼ばれ、アイヌが持っている刀の総称です。ただ、一口にアイヌ刀といっても、エムシ・タンネプイコロ・タクネプイコロという3種類の刀が含まれています。エムシは和人から刀身をもらい、さやや柄(つか)を自作して付けたもの、タンネプイコロ・タクネプイコロは和人が作った真ちゅうや銀メッキなどの金属製の装飾で覆われたさやや柄で刀身は木や竹で代用されることが多いです。タンネプイコロは長い宝刀、タクネプイコロは短い宝刀でタンネプが長いを表すアイヌ語、タクネプが短いを表すアイヌ語です。刀は闘争のためではなく、魔を払うものとして儀式や祭りの際に使用したり、宝物として神様にささげられたりしていました。
アイヌ刀の独自性は古くから知られていて、江戸時代から多くの記録が残されており、各地の博物館にもアイヌ文化を紹介するものとして展示されています。アイヌ刀は日本刀の刀身やさや、柄を用いるなど類似性がみられる一方で、武器としての「切れる刀」から儀礼用の「切れない刀」へ使用方法が変わっていきます。
今回の展示を通して和人とアイヌの交流やアイヌ刀の役割を知っていただけたらと思います。
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午前9時半から午後5時。観覧料は一般300円、高校・大学生200円、中学生以下無料。月曜休館。
(苫小牧市美術博物館学芸員 岩波連)