野鳥たちの子育てシーズン到来 温かく見守って

  • 救護室のカルテ, 特集
  • 2022年5月20日
過去に誤認保護されたフクロウ

  現在、自然界の野鳥たちは繁殖期を迎え、命を後世につなぐため、パートナー選びや巣作り、子育てと、1年間のライフサイクルの中で最も重要ともいえるシーズンとなりました。そしてこの時期に合わせ、ウトナイ湖野生鳥獣保護センターでも野鳥の子育てに関連する相談件数は増え、昨年も数十件ほどの問い合わせがありました。中でも多いのが「巣立ちしたばかりのようなヒナが、飛べずに地面にいるがどうしたらよいか」というものです。

   意外に思われるかもしれませんが、野鳥のヒナは、まだしっかり飛べない状態で巣立ちをすることがあります。そして、しばらくの間、親鳥の世話を受けながら徐々に飛翔力をつけ、餌の捕り方や外敵から身を守る方法などを教わり自立を目指します。そのため、ヒナが地面にいても問題ないことが多く、近づいたり保護することなく、そっとそのままにしていただくようお願いしています。

   野鳥の中には、ヒナ特有のフワフワの羽毛を身につけ、しっかり飛べないどころか、少しも飛べない状態で巣立ちしてしまうものもいます。それはフクロウ類です。昨年も3件のフクロウ類のヒナの相談があり、いずれも森の中で飛べずにいたところ遭遇したとのことでした。

   一般的にフクロウ類のヒナは、巣穴から初めて外の世界に出る際は、まったく飛べるような状態ではないため、「巣立つ」というより「巣落ち」のようなイメージ。しかし、地上に降りた後は、その鋭い爪を持つ足で木によじ登り、安全な樹上で親鳥の世話を受けながら成長します。そのため、この地上にいるタイミングで人に発見されると、迷い子に間違われてしまうのです。

   ですが、フクロウ類にしてもやはりほかの野鳥のヒナと同様に、私たちができる最善の策は、すぐにその場を離れることです。たとえ、親鳥の姿が見えなくても、たいていの場合近くで身を潜めているので、私たちがいなくなることで親鳥とヒナは再会し、また子育てを続けることができるのです。野鳥たちが懸命に命を育むこの季節、野外でヒナに出合っても、親子の絆を信じどうか温かく見守っていただけたらと願います。

  (ウトナイ湖野生鳥獣保護センター・山田智子獣医師)

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