カラスにまつわる話 地域により個体差 ウトナイ湖サンクチュアリレンジャー通信

  • レンジャー通信, 特集
  • 2022年3月4日
何を見ているの? ハシボソガラス

  シマエナガブームの陰で、カラスに関する書籍の出版や博物館で企画展が催されるなど、ひそかにカラスも人気があります。

   苫小牧市内には、主にハシボソガラスとハシブトガラス(以下ボソ、ブト)が生息しています。ハシとはくちばしのことで、両種ではその幅に違いがあることが知られていますが、実際野外で見ると判然としない個体も多くいます。体はブトの方が一回り大きいのですが、以前苫小牧港で「ボソだ」と思った個体が、近づいてみるとブトだったことが数回ありました。

   なぜ何度も見間違えるのか不思議でしたが、カラスの研究では同じ種でも地域により個体差があることが報告されており、以前私が住んでいた根室のブトに比べると、苫小牧のブトはどうやら小さくて、ボソ程度の大きさしかないようなのです。地域によって主食が異なることで、身体の大きさに差があるのかもしれません。これは私の目の錯覚だけではないようで、根室から赴任した先輩レンジャーも同じ印象を持っており、今後も注目したいポイントです。

   ところで私の自宅の窓からは、集合住宅のごみ集積場が五つ見えます。可燃ごみの収集日の朝は、カラスたちが、それぞれのごみ箱の周りの電線で見張っています。市の指定袋で出されるごみは、ごちそうになるかもしれないと分かっているようです。困ったことに、あふれかえったごみ箱にさらにぎゅうぎゅう押し込んで、蓋の鍵を閉めずに行ってしまう人もいます。

   何かの拍子で蓋が開いてしまうと、カラスは一気に食べ物をあさり、食パン一切れ丸ごとくわえた個体もいました。このようなケースを「非意図的な餌やり」といいます。自宅の周りが、カラスに散らかされるのは誰だって嫌なはずです。ごみをあさるカラスが悪いのか、ごみ出しのルールを守らない人が悪いのか、それは一目瞭然です。

   あとひと月もすれば、カラスが巣作りを始めます。カラスもシマエナガも同じ野鳥。今年の春は、そんな目で彼らを見てほしいなと思います。

  (日本野鳥の会ウトナイ湖サンクチュアリ・善浪めぐみレンジャー)

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